ビートルズのメンバーに会ったことのある人々に取材する〜『ビートルズと私』

 『ビートルズと私』を見てきた。ビートルズのメンバーに会ったことある人たちを取材するというドキュメンタリー映画である。

 ビートルズ全員に会ったことがあるスタッフやミュージシャンなどをはじめとして、解散後にビートルの誰かに会った人とかファンとかいろいろなタイプの人に取材しており、その中で一番印象的な逸話を短くまとめるというふうにしているので、シンプルな作りだけど飽きずに見れる。なぜかカメラをかまえている監督のセス・スワースキーもたまに画面に映っており、ファンがビートルズゆかりの人々を巡礼するという個人的な映画という側面もあって、かなり監督の思い入れが入った作品である。

 なんといっても取材される人が結構キャラが濃いのでそれだけで面白いというのもある。ブライアン・ウィルソンやチープ・トリックのリックなどのミュージシャンはもちろん、60年代にビートルズを追っかけていた女性ファンたちは今はすっかりおばちゃまになっているのだが皆パワフルだ。ファンの解説によると、ジョージ・ハリスンはやたら崇拝されるのは好きではなかったが、アップルの前に詰めかけている女性ファンに対しては非常に紳士的で親切だったらしい。

 面白かったエピソードとしては、最晩年にジョン・レノンが若干丸くなって政治的に穏健になった一方、若い頃同様冗談や人を食ったイタズラは相変わらず好きで、ガチ左翼の人の前でわざと保守的なことを言って怒らせて喜んでいたという話が面白かった(アシスタントに「カーターがひどすぎるので自分がアメリカ人ならレーガンに投票する」と言ったらしいのだが、たぶんそれは英国式のジョークだと思う)。あと、これもかなり晩年、アート・ガーファンクルと初めて会った日に寝室にガーファンクルを呼んで、「うちのポールが最近仕事を一緒にしようといってきてるだけど、君も君んとこのポールと最近一緒に仕事したよね?どうだった?」と聞いたという話が面白い。