『世界一美しい本を作る男 シュタイデルとの旅』を見てきた。紙から装丁まであらゆるところにこだわった美しい本を作ることで有名なドイツの出版社、シュタイデル社のボスであるゲルハルト・シュタイデルが世界を飛び回りつつ本を作る様子を撮ったドキュメンタリー映画である。
↓これがトレイラー。
まず、単純にうちの店はシュタイデルの写真集を扱っているので、ふだん売っているものがこんな手の込んだプロセスで作られているとは…ということを知って面白かった。パッと見「キレイに見える」という印象を作り出すためだけに、果てしなく続くように見える色の微調整とか装丁の検討とかこんな細かい作業が行われているとは思っていなかったのでびっくり。キレイに見えるにはすごい努力が必要なのだ。
また、この電子出版の時代に美本を作っているだけあってシュタイデルは「モノの便利さ」を大事にする人である。シュタイデルは海外まで行って実際に写真家や作家と会って打ち合わせするのが好きらしいのだが、それは感情的なこだわりとかよりはむしろそのほうが早く仕事がすんで何ヶ月もかけなくてすむから、といういかにも利便性を重んじる職人らしいものだ。はたまたシュタイデルが出す本はどれもキレイだけど書籍の操作性の良さみたいなものをかなり考えているデザインだと思った。モノの本には電子書籍にはない利便性というのが結構いっぱいあり、『IDUBAI』みたいなiPhoneをヒントにした本を作っている時でもシュタイデルの本はぱらぱらめくって見やすい本だというところがあるように見える。モノは美しいだけじゃなく便利でないといけない。用の美というのは大事なことだ。
ちなみにこのドキュメンタリーにはギュンター・グラスとかロバート・フランクとか著名人本人が結構出演していてそのへんも小ネタとして面白い。