クロスジェンダーの戯れ〜ワンズスタジオ『夏の夜の夢』

 江古田のワンズスタジオでまめ芝の『夏の夜の夢』を見てきた。カフェつきの小さい小屋で、ちょっとパブシアター風。

 セットは黒い小部屋に花とかつるとか植物をつけただけの簡単なもの。それほど多くない人数でとっかえひっかえいろんな役をやる。

 とりあえず文句をつけたいところはたくさんある。まず役者の台詞回しにけっこう難があり(つっかえたりトチったりが多く、流暢さに欠ける印象)、そこはちょっとなぁと思った。台詞がかなりカットされていると思ったのだが(とくにヘレナの台詞)、けっこう印象に残る原作の台詞もカットされてる気がする。あとフィロストレイトがかなり寒い…一番よくないと思ったのは最後の劇中劇で、非常に様式化してしまって、主役たちを含めて主な登場人物が全員、舞台の三方を囲むように端に座り、職人たちは仮面をつけて出てきて踊るだけで、台詞じたいは周りに座っている人々がかわるがわる言う、という構成にしていたのだが、これだと劇中劇を見ている三組のカップル(ここに我々観客は自分の視点を重ね合わせることができる)が文句をつけて観客の意見を代弁し、笑いを醸し出すという描写がすっかりなくなり、非常につまらないと思った。

 ただし良いところもたくさんある。一番良いのは、ふつうはダブルキャストにするオーベロン/シーシアスとタイターニア/ヒポリタを、ジェンダー入れ替えのダブルキャストにしたところである。つまりふつうだとオーベロンとシーシアスを同じ男優が、タイターニアとヒポリタを同じ女優が演じることが多いのだが、この上演ではオーベロン/ヒポリタを同じ男優が、タイターニア/シーシアスを同じ女優が演じている。こうするとヒポリタのアマゾネスらしさ、ある種のマスキュリニティが際立つ一方、「剣で求婚した」と言い張っていて演出のしかたによっては暴力的な男にも見えるシーシアスのあたりがいくぶん柔らかくなり、まるで恋に溺れてイキがっている男のように見えてちょっとかわいらしくなる。この演出ではヒッポリタとシーシアスは互いにメロメロで、こういうクロスジェンダーのキャスティングだとそういう「ふだんは虚勢を張っているが実はメロメロ」の二人の個性がよく出てきてなかなか良いと思う。これまた普通の演出の裏をかく感じでパックを優雅に、オーベロンをエネルギッシュに作ってきているあたりも特徴的で面白かった。