個人的に、抽象表現主義が嫌いだとキツい〜新国立『RED』

 新国立で小川絵梨子演出『RED』を見てきた。この作品は『スカイフォール』の脚本家で、芝居としては『ピーターとアリス』などを書いたジョン・ローガンの戯曲である。マーク・ロスコについての芝居なのだが、ロスコ役は田中哲司、助手のケン役は小栗旬である。

 内容としては、ロスコが(今では「シーグラム壁画」と呼ばれている)シーグラムビルに入るフォー・シーズンズ用の壁画を依頼され、助手としてケンを雇って仕事をしていく様子を描くものである。セットはロスコのアトリエで、壁にはカンバスや棚、右手に作業台(レコードもかけられる)があり、それ以外は木の床だ。演出は小川絵梨子ということで、ちょっと去年の『ロンサム・ウェスト』を思わせるところもある。で、私の体調が絶不調だったせいもあるかもしれないが、そんなに悪い戯曲だとは思わなかったし、演技も良かったんだけど、どうもそれ以上の感想が湧かなかった…同じジョン・ローガンなら『ピーターとアリス』のほうが心に迫るものがあったのだが、『RED』はわりと根底にある美学的な探求にちょっとあまり興味をそそられなかった。これはたぶん完全に個人的な問題で、私が抽象表現主義の絵画に興味がないというかむしろ好きじゃ無いほうだということがあると思うので、もともとロスコなどが好きな人が見たらあのあたりの絵画的探求についてもっと面白く、背景も理解して見られるのかもしれない。