『夏の夜の夢』+『二人の貴公子』でアテネの夜と昼〜明治大学シェイクスピアプロジェクト『Midsummer Nightmare』

 明治大学シェイクスピアプロジェクト『Midsummer Nightmare』を見てきた。『夏の夜の夢』と『二人の貴公子』を組み合わせるというものである。

 2階建てのセットで、階上の左上には楽器がセットされている。奥の上には太陽と月を模した絵がかけられており、これは雲で隠せるようになっていて、前半の『夏の夜の夢』の時は太陽、後半の『二人の貴公子』の時には月を隠しておくことで、全体をアテネの夜と昼の物語としてつなげるようになっている。衣装は洋風のものだがけっこう色合いなど気を遣っていて、女性の衣装がとくにキャラに似合うよう工夫されていたと思う。

 前半はふつうの『夏の夜の夢』で、まあ笑えるところはけっこうあるが、そんなに目新しいというわけではなかったように思う。最後の職人たちの芝居の場面はいったんカットされて、後半『二人の貴公子』が終わった後にシーシアスとヒポリタ、ヘレナとディミートリアス、ハーミアとライサンダー、さらに『二人の貴公子』で結婚が決まったパラモンとエミリア(+牢番の娘夫婦)の婚礼の祝いの出し物として上演される。

 『二人の貴公子』は、普通の上演方法で見たのは今回が初めてなのだが(翻案は見たことある)、私はもともとこれは他のシェイクスピア劇(ジョン・フレッチャーとの共作だが)に比べるとあんまり面白い芝居じゃないと思っているし、見た後の感想も変わらなかった。テーベの貴公子で戦争捕虜としてアテネに連れて来られたいとこ同士で親友とアーサイトとパラモンがシーシアスの妹エミリアの愛をめぐって争い、決闘でアーサイトが勝つが直後に事故死してしまってパラモンがエミリアと結婚することになるというのが主筋で、これにパラモンに恋して狂気に陥ってしまった牢番の娘の脇筋が絡んでくる。現代の感覚からすると、牢番の娘とパラモンが結ばれるのが穏当に見えるのだが、どうしても階級の差を超えられず、牢番の娘が騙されて結局同じ階級の婚約者と結婚するみたいなオチになるので、読んでいてちょっと引いてしまうところがある。このプロダクションではそのあたりのエグいところをカットしてあまり気にならないようにまとめているので、そこはよく気を遣っていると思った。

 全体的にはそんなに斬新とかいうわけではなかったと思うのだが、やはりこの2つの芝居をうまくつないで、シェイクスピアアテネとでもいうべきものを見せる試みは大変面白い。とくに『夏夢』のパックが『二人の貴公子』では医者として出てきて恋人たちのトラブルを解決してくれるあたりはなかなか気が利いている。この芝居のパックは、常に恋人たちの狂気をおさめる仕事をする妖精として描写されており、これは妖精の描き方としてなかなかいいと思った。