私は好きだが、相当クセがある〜『キング・アーサー』(ネタバレあり)

 ガイ・リッチー監督『キング・アーサー』を見てきた。

 ヴォーティガン(ジュード・ロウ)は兄王ユーサーを殺してイングランドの王となるが、ユーサーの息子でまだ幼児だったアーサーは殺害を免れ、ロンドンの下町に流れ着く。売春宿で娼婦たちに育てられ、自分の出自はすっかり忘れてスラムの顔役になったアーサー(チャーリー・ハナム)だが、ある時ひょんなことからエクスカリバーに巡り会い、王の直系であることがわかる。ヴォーティガンはアーサーの命を狙うが、かつてアーサーに仕えていたベディヴィア(ジャイモン・フンスー)やメイジ(アストリッド・ベルジュ=フリスベ)に助けられ、やがてロンドンの下町の連中に支持も受けて王位奪還へ…

 歴史的にはしっちゃかめっちゃかな作品で、ゾウを使った戦い(『ロード・オブ・ザ・リング』にヴィジュアルがそっくり)から始まり、ロンドンはチャイニーズやアフリカ・カリブ系が入り乱れていてまるで現代の下町だし、アーサーの強い味方となるチャイニーズのジョージはカンフーの師匠である(!)。アーサーは完全に下町のにいちゃんで、最後はこの貧しい育ちのいろいろな民族・出自の連中が貴族の生まれであるベディヴィアとかと一緒に円卓の騎士になる。大変むちゃくちゃなようだが、よく考えるとアーサー王の物語なんていうのは中世の人には一大娯楽で、現代人が動物園でゾウを見たり、カンフー映画を見たりするのとたいして変わらなかったのではとも思えてくるので、こういう設定は「中世の人たちが楽しんでいたようなノリでアーサー王を現代人に楽しませる」というコンセプトとしてはけっこう的確なのかもしれない。

 そういうことを考えながらリラックスして見るといろいろ面白いし、仲間同士のアツい協力関係の描き方とか、チャーミングなところがたくさんある映画だと思うのだが、ただどの場面でも物凄いガイ・リッチー力が炸裂しているため、一般ウケはしないだろうと思った。よくガイ・リッチーがやる、「何かのプランを説明しながら、実際にその行動をやっているところも切り替えで見せる」という場面がけっこうしつこくあるし、全体的にアクションの詰め込みっぷりとかわちゃわちゃした編集の熱量とかがいつもに増して過剰なので、見ていてうんざりする人もいるだろうな…と思う。あと、売春宿で育った設定があんまり生かされておらず(前半でしか使われていない)、もっと終盤部分でも育ててくれた娼婦たちとアーサーの交流をちゃんと入れたほうがいいんじゃないかと思った(娼婦たち、貴族、魔法使いとけっこう女性は出てくるのだが、会話が少なくてベクデル・テストはパスしない)。