若者珍道中記〜『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』

 シス・カンパニーローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』を見てきた。言わずと知れたトム・ストッパードの有名作で、演出は小川絵梨子である。

 『ハムレット』で何もできずに右往左往して死んでしまうローゼンクランツとギルデンスターンを主人公にした不条理ドタバタ劇である。この演出はあまり奇をてらわない感じのもので、階段を使ったセット(開始直前にセッティングする)で全体が展開する。休憩が2回あるという珍しい時間配分で、休憩がそんなにあるっていうことは何か水とか血糊とか粉でも飛ばすのかと思ったが(それなら片付けるための休憩時間が必要だから)、別にそういうど派手なけれんがあるわけではなく、わりとストレートな雰囲気の上演だった。

 全体的に若々しい雰囲気の芝居だ。ローゼンクランツ(生田斗真)とギルデンスターン(菅田将暉)はいかにも現代の若者という感じで、親しみやすさがある一方、力強いものに流されやすい。ただ、生田ローゼンクランツが非常にナチュラルなボケを上手にかましていてとても笑える一方、菅田ギルデンスターンはちょっと台詞に生硬さがある気がした。そしてこのプロダクションのハムレット(林遣都)はやたら意識高くてカリスマがあってコミュ力高そうでしかも派手に狂気に陥っているという設定なので、まあこんな人物が友人ならこのローゼンクランツやギルデンスターンみたいなタイプの若者は右往左往させられちゃうだろうなーと妙に説得力があった。私がふだん大学生を教えているかもしれないが、このプロダクションのハムレットは、大学でサークルとかフィールドワーク系のゼミとかやると必ずリーダーになるんだけど、優秀すぎて周りの学生がついて行けなくなってしまったり、やたらハイレベルな要求をしてグループの他の子を困らせたりする一方、一度悩んじゃうと大変なことになるタイプだろう。そういうハムレット林遣都が実に楽しそうに演じており、平凡で決まった人生を望んでいるローゼンクランツとギルデンスターンはこんな友人の前ではひとたまりもない。