豪華な上演~明治大学シェイクスピアプロジェクト『ヴェニスの商人』

 明治大学シェイクスピアプロジェクト『ヴェニスの商人』を見てきた。

 

 相変わらずしっかりした上演で、台詞も演技も非常にきちんとしており、笑いのツボもおさえている。中央に一箇所高くした場所を作ったセットで左側上方には生演奏のバンドを置き、ベルモントの場面では後景にポーシャの父と思しき人物の大きな肖像画がかかっている。通常の劇団に比べるとたくさんの人を舞台上に出せるという強みがあり、箱選びの場面では求婚者がぞろぞろと従者を引き連れてくるし、裁判の場面などはけっこう傍聴者がたくさんいて、見た目がとても豪華だ。人海戦術で豪華さを出せるという点では、ひょっとするとたいていのプロの劇団よりも有利かもしれない。

 

 キャスティングについては、シャイロックは大学生とは思えないくらいうまかったし、2人目の求婚者の場面ではアラゴンの母親を出すなどの工夫も良かったのだが、1人目の求婚者であるモロッコがブラックフェイスだったのはちょっといただけないと思った。あと、キャッチコピーで「それは、秤にかけてはいけない」というのがあったので、裁判の場面ではもっと秤を基調にしたビジュアルが出てくるかと思ったのだが、けっこうシンプルな作りでそもそもシャイロックが秤を見せびらかしたりするところもなかったので、ちょっと肩すかし感があった。