『ミッドサマー』好きならこれを見よ!~スウェーデン王立バレエ『夏の夜の夢』(配信、ネタバレあり)

 Mrquee TVのフリートライアルでアレクサンダー・エクマン振付、スウェーデン王立バレエ『夏の夜の夢』を見た。2017年の上演を収録したものである。タイトルはシェイクスピアで多少の影響はあると思うのだが、お話は戯曲とは全く関係なく、北欧の夏至祭りを題材にしたものである。ダンスだけではなく、歌手のアンナ・フォン・ハウスヴォルフによる歌もあり、テクノっぽい音楽なども使われている。

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 なんだかものすごく『ミッドサマー』を思わせるバレエである(バレエのほうが先なのだが、スタッフは誰かこれを見てたのだろうか?)。ベッドが出てきて夢を暗示するちょっとしたプロローグの後(このベッドを吊り下げるところはちょっと前に見た『夏の夜の夢』に似ているかもしれない)、いきなり大勢の男女が畑か牧場のような場所で藁を振り回しているところから始まる。序盤は恋人たちの乱痴気騒ぎが続くのだが、お祭りの儀礼はいろいろ変化し、藁の柱をたててその周りを輪になって踊ったり、乾杯をしたり、『ミッドサマー』にも出てきた長いテーブルで食事したりする。夜の夢のシークエンスはやたらシュールで、重力があやしくなってこの長いテーブルの片方が斜めに持ち上がって大きな坂みたいになるし、さっきまでは料理の材料だったはずの魚も巨大化して登場する。眠りが終わって夢から覚めようとするあたりでは、音楽と動きで名残惜しくやや寂しい雰囲気をうまく表現している。

 エネルギッシュな踊りだけではなく、スローモーションを組み合わせて陶酔や笑いなどを表現する動きがとても面白い。美術や衣装も綺麗だし、見入ってしまった。弦楽のギシギシした音にあわせた夢に誘うような歌も良い一方、目覚めが近くなるところではダンサーが舌を鳴らす音でリズムを打つといった変わった音作りもある。これは『ミッドサマー』好きは是非見るべきだと思う。