子役がすごくうまい~ストラトフォード・フェスティヴァル『恋の骨折り損』(配信)

 ストラトフォード・フェスティヴァル『恋の骨折り損』を配信で見た。ジョン・ケアード演出で、2015年のプロダクションらしい。

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 『恋の骨折り損』はもともとシェイクスピア劇の中ではそんなに人気がないというか、初期の作品で流行りにそってやたら凝ったセリフをつぎ込んだもので、現代のお客さんには同系列の他のロマンティックコメディほど魅力が感じられないことも多い。しかしながらこのプロダクションはツボをおさえたとても楽しい上演にしている。ジョン・ケアードらしくあまり奇をてらわない感じでしっかり面白くするプロダクションで、衣装はルネサンス風にして、音楽も上手に使っている。 

 役者陣は皆生き生きしているのだが、モス役のゲイブリエル・ロングはまだ12歳くらいらしいのに大変上手な子役でビックリした。中に大人でも入ってるのかと思うような堂々たる演技である。主要キャストのほうについては、ナバラ王(サンジェイ・タルワール)とフランス王女(ルビー・ジョイ)が2人ともメガネをかけてちょっと学問好きそうな雰囲気で、相性がよいということを衣装で示している。この2人は全体的に外交的というか、政治家として責務を背負っている感じなのだが、男性陣も女性陣も他の3人のほうがのびのびしている印象を受けた。

 このプロダクションでは女性陣は王女以外全員が非白人、男性陣はデュメイン(トマス・オラジド)以外白人の役者が演じているのだが、この人種バランスについてきわどい諷刺的なジョークが盛り込まれている。途中でビローン(マイク・シャラ)が色黒な恋人ロザライン(サラ・アフル)を褒めるところで(これはもともとの戯曲にある設定で、ロザラインは色黒で可愛いらしい)、自分の恋人で色白であるフランス王女のほうが美人だと強硬に主張するフランス王が黒は地獄の色だとかひどい人種差別・容姿差別発言をする台詞がある。そこで自身が黒人であるデュメインが「はあ?」みたいな顔でフランス王をにらんで、フランス王がくだらないことを言い張って親友の気分を害したと焦る演出がある。ここはフランス王の発言がアホだということを示しつつしっかり笑えるようにしており、全体にこういう細かい演出が行き届いているところが良い。