いったいどういう作品だったのだろうか…RSC、Swingin' the Dream(配信)

 ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが有料で配信しているSwingin' the Dreamを見た。これは1939年に豪華メンバーで制作されたブロードウェイミュージカルで、『夏の夜の夢』のジャズ版だったらしい。ほとんど資料が残っていないのだが、今わかっているものだけジャズミュージシャンを集めてコンサート形式で復元したというワークショップ的な公演である。

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 1890年代のニューオーリンズが舞台で、ボトム役のルイ・アームストロングをはじめとするそうそうたるアフリカ系アメリカ人パフォーマーを揃えた作品だったらしい。クィンスにあたる役が女性で、オープンリーレズビアンのコメディアンだったマムズ・メイブリーが演じており、パック役は『風と共に去りぬ』のプリシー役で舞台の『夏の夜の夢』にダンサーとして出たこともあるバタフライ・マックィーンだったそうだ。100人以上のキャストがいる大きなプロダクションだったが、大失敗ですぐ閉幕し、完全な台本が残っていない。

 ジャズ版『夏の夜の夢』でアフリカ系アメリカ人のスターが大集合というだけで興味を惹かれるし、1939年にこういう企画をやるというのは革新的ではあったはずだ。RSCの部分的な復元から推測するだけでもかなり面白そうだと思ったのだが、ただ実際はけっこうヤバい内容だったかもしれないというイヤな予感もした。メインの恋人たちは白人の俳優、職人劇団や妖精たちが黒人の俳優という布陣だったそうで、アメリカ南部の農園が舞台…とくると、とくに職人劇団の描写はかなりステレオタイプな「陽気で間抜けな田舎の黒人」的なものだったかもしれず、わりと警戒してしまう。オーソン・ウェルズの有名な『ヴードゥーマクベス』(オールブラックキャストの舞台版『マクベス』)が1936年、『風と共に去りぬ』が1939年で、どっちの方向に近いものだったのだろうか…と見ながら思った。