横内謙介『フォーティンブラス』を見てきた。中屋敷法仁の演出である。1990年初演で何度か再演されている芝居だが、初めて見た。
『ハムレット』を演じる一座のバックステージものである。スターである正美（内博貴）がハムレット役で上演を行っているが、正美はセリフもまともに覚えておらず、上演はひどい出来である。しかも正美は大変なハラスメント野郎で、フォーティンブラス役の羽沢（戸塚祥太）やオズリック役の和馬（納谷健）をいじめている上、共演する女優たちに悪質なセクハラをしている。羽沢は他の役者たちとともに復讐を夢見ているが、そこに突然、フォーティンブラスの父と名乗る幽霊が現れる。
全体的に演出とか演技とかは悪くないのでそこそこ楽しめるのだが、戯曲が古くなっているという印象を受けた。イマドキ、正美くらいひどいハラスメント体質だとすぐマスコミにバレるのではないかと思うし（この間見た『マクラDEリア王』はそういう話だった）、 #MeTooをやっている時代に明らかな対価型セクハラを繰り返している正美が罰されることもなく、最後ちゃんと芝居をやって大団円…みたいな終わり方はあり得ない気がする。あと、この作品の初演時はフォーティンブラスはつまらない端役扱いだったのかもしれないが、今の『ハムレット』公演だと出番は少なくてももうけ役扱いというか、これからハムレットをやるような若手が演じる大事な役として扱われている気がするので、羽沢がフォーティンブラス役であんなにクサっているのがあまりしっくり来ない（なんてったって若い時の小栗旬とかがやるような役である）。全体的にずいぶん昔の演劇観に基づいた作品だという印象を受けた。
演技は悪くないし、セットとか演出もいいと思うのだが、ひとつだけ気になったのが、タマヨ（矢島舞美）役になんでもっと年上の女優を起用しないんだろう…ということである。別に矢島舞美の演技に不満があるわけではないのだが、岸川（吉田智則）と同じくらいの年齢であるはずなのに若すぎる。同じくらいの年齢のカップルの役ならできるかぎり同じくらいの年齢の男優、女優を起用すべきで、女優だけ若くするのは良くないと思う。ここで女優だけ若くするみたいなやり方が、正美がやっているようなハラスメントが横行しやすい環境を作っているのじゃないかと思うからだ。
