手持ちカメラの使い方がちょっと…『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』(試写)

 『パーフェクト・ノーマル・ファミリー』を試写で見た。

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 監督のマルー・ライマンの実体験に基づいた作品である。舞台は90年代末頃のデンマークが舞台である。ヒロインであるエマ(カヤ・トフト・ローホルト)はサッカーに夢中の少女で、両親と姉のカロリーネ(リーモア・ランテ)と暮らしていた。ところがある日突然両親が離婚することになり、その理由は父トマス(ミケル・ボー・フルスゴー)がトランス女性としてカムアウトしたからだという。父がアウネーテという女性になったのを受け入れられないエマは戸惑うが…

 実体験に基づいているということで、年が上のカロリーネはわりと状況をすぐ受け入れられるのに、下の娘のエマは受け入れられないという状況がリアルに描かれている。エマがアウネーテに対して行う発言とか振る舞いはかなりひどいと思われるものもあり、おそらく実際に起こったことをそのまま描いているのだろうと思う。ただ、おそらくこれは90年代末だということも関係しており、今に比べるとそういう家庭が少なかったからエマが受け入れられないというのもあったのかもしれない(今だとお母さんが2人いる家庭というのはわりと北欧でもあるだろうし、そんなに子どもも気にしないかも…と思う)。アウネーテの役を男優が演じていたり、エマが「自分にはお母さんが2人になった」と考えずに「お父さんが女性になった」と考えているあたり、全体的にちょっと作りが90年代っぽいところがあるように思った。そこがリアルと言える一方で価値観がアップデートされていないとも言えて、実体験であるからには仕方ないのだが、ちょっと見ていて古さを感じるところもある。 

 あと、技術的にはけっこう撮影に気になるところがあった。ホームビデオっぽい映像を取り入れているのは90年代風の「リアル」志向なのだろうが、これはそんなに効果をあげているとは思えなかった。あと、手持ちカメラの使い方について、最後にエマが歩いているところをやたらブレた手持ちで撮り、走るところまで手持ちカメラで追いかけているのは、エマの揺れる心情に映像をあわせたかったのだろうとは思うが、明らかにやりすぎだと思う。これは撮影だけではなくお話にも言えることなのだが、全体的になんでもかんでも「リアル」志向にせず、もうちょっと映画らしく固定でじっくり撮ったほうがいいのではと思う。