コックと泥棒、愛人と…『サンクスギビング』(ネタバレあり)

 『サンクスギビング』を見てきた。イーライ・ロスが監督で、『グラインドハウス』(2007)に入っていたなんちゃって予告編をもとにした作品である。ただ、『グラインドハウス』の予告編で予告されていた映画そのものではなく、そのリブート(もとの映画はフィルムが廃棄されてもう見られないという設定)という形で作られているので、実在しない映画のリブートというちょっと複雑な設定の映画になっている。

www.youtube.com

 舞台は感謝祭発祥の地プリマスである。ある年のブラックフライデーのセールで、地元の大きなスーパーであるライトマートで群衆事故が発生し、死者が出る悲惨な事態になる。その1年後、感謝祭の準備をまた始めた町で殺人事件が起こり始める。

 私は感謝祭の習慣について非常に疎く、プリマスが感謝祭発祥の地として大きなお祝いをしているとか、ジョン・カーヴァーはピルグリム・ファーザーズのひとりでプリマス初代知事だとかいうようなことを全く知らなかったのだが、この映画はかなりアメリカにおける感謝祭の習慣に依拠して作られている。家族が集まって感謝をささげる祝日ということで、アメリカ人には大事なのだろうがちょっとウザい感じもあり、またブラックフライデーは商業化されすぎているので祝日としての意味が失われているようにも見える。この映画を見ていると、なんで感謝祭のホリデーホラーがあんまり作られていなかったのかな…と思うくらいツッコミどころが多いホラー向きな祝日に見える(ホラー向きの祝日なんていうものがあるのかどうかはともかく)。

 かなり血が出るスラッシャー映画なのだが、なんちゃって予告編に比べるとずいぶんモダンで洗練された感じになっている。残酷すぎて笑えるみたいなところもたくさんある。いろいろなホラー映画に対するオマージュやパロディがあるのだが、終盤にピーター・グリーナウェイの『コックと泥棒、その妻と愛人』オマージュと思しき描写があり、言われてみればグリーナウェイのこの映画は復讐ホラーだな…と思った。