『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』を見た。
1969年のケネディ宇宙センターが舞台である。NASAはアポロ11号打ち上げ準備をしていたが、議会があまり宇宙開発に関心を示さなくなり、予算がもらえないかもしれないという危機に陥っていた。アメリカがソ連との宇宙開発競争に負けることを危惧した政府筋のエージェント、モー(ウディ・ハレルソン)は詐欺師まがいの強引なやり口を得意とするPRスペシャリストのケリー(スカーレット・ジョハンソン)を雇い、国民の関心を宇宙開発に向けようとする。ケリーはアポロ11号の計画責任者であるコール(チャニング・テイタム)と時にはいがみあい、時には協力しつつPRを成功させ、議会の支持もとりつける。しかしながらあまりにもPRが成功しすぎて国民の注目が集まってしまったため、ケリーは失敗してしまった場合に備えてニセの月面着陸シーンを撮影するようモーから命じられる。
いわゆるアポロ計画陰謀論をネタにした時代物ロマコメである。アメリカにはアポロ11号は月に行っていなくて、月面着陸の映像はハリウッドが作ったニセものだというようなことを信じている陰謀論者がけっこういるらしいのだが、それを題材にしている。予告を見た時は陰謀論を助長してしまうような内容では…ちょっと心配になったのだが、オチはそういう陰謀論に冷や水を浴びせる…というか、そんなことをするのはNASAで働いていた人たちに対する侮辱であるからダメに決まっているということで、科学の素晴らしさや宇宙のロマンを称える方向に落としているので、陰謀論をどちらかというとおちょくっている映画だと思う。
少々とっちらかったところもあるが、全体としてはとても楽しいスクリューボールコメディである。PR方針をめぐっていがみあいまくっていたケリーとコールがわりとすぐ態度を変えてくっついてしまうところとか、終盤でニセ映像を流そうとするモーを止めるためのドタバタにちょっとまとまりがないとか、いくつか不足に思えるところはあるのだが、とにかくジョハンソンとテイタムの息の合った掛け合いが楽しい作品だ。序盤から出てきていた黒ネコが最後に大活躍するのもいい。
とくにいいのはスカーレット・ジョハンソンがかなりマリリン・モンローを意識した髪型やファッションで出てきていることである。60年代ファッションなのだが、男ばかりのPR業界で野心満々のビジネスウーマンという役どころなので、ちょっとフォーマルな型なのだが色使いはカラフルで男社会に迎合しない感じを醸し出しており、着ているものを見るだけで楽しい。実際にはマリリン・モンローは1950-60年代初頭の性差別的なハリウッドにおいてこういう色っぽいけど頭の切れる働く女性みたいな役はもらえなかったわけで、もしこのジョハンソンみたいな役をもらえていたらどんなに役の幅が広がって素晴らしかっただろうか…と思ってしまった。