とにかく深刻な韓国ノワール~『このろくでもない世界で』(試写)

 キム・チャンフン監督『このろくでもない世界で』を試写で見た。

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 韓国の地方都市が舞台である。18歳の少年ヨンギュ(ホン・サビン)は継父からDVを受け、さらに義理の妹ハヤン(キム・ヒョンソ)をいじめから守ろうとして学校で暴力をふるい、停学になってしまう。そんなヨンギュを地元のやくざ者を束ねているチゴン(ソン・ジュンギ)が拾い、ヨンギュはチゴンの弟分になる。ところが若くて未経験なヨンギュはどんどん組織犯罪の駒として使われるようになり…

 全体的にとにかく暗くて深刻な韓国ノワールである。舞台になっている地方都市がけっこう日本とかにもありそうな感じ…というか、景気がイマイチでいろいろなしがらみがあり、いじめとか癒着が見逃されて放置されている感じの町で、最近大変な恥さらしの連続となっているわが旭川をちょっと思い出してしまった(汚職やいじめが隠蔽されているほうが恥さらしだと思うのだが、こういう町にいる人はそういうのが表に出るほうが恥さらしだと勘違いしている)。格差社会の歪みがテーマという点では『パラサイト 半地下の家族』から『ビニールハウス』に至る一連の韓国映画がお得意とするところで、それをこれまた韓国映画が得意とするノワールにうまく絡めた感じである。また、若くて未経験な主人公がまずそうな世界を垣間見るという点では台湾映画『オールド・フォックス 11歳の選択』にもちょっと似ているかもしれない。主演陣の演技もいいし、真面目な作品だが、全体的に息苦しく、けっこう見るのに体力が要る映画だ。