気の利いたゲイのロマンティックコメディ~Bros

 Brosを見た。

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 ボビー(ビリー・アイクナー)は性的マイノリティをテーマとするポッドキャスト配信者で、LGBTQ+歴史博物館の設立のため奔走している。神経質でおしゃべりなボビーはイケてる弁護士のアーロン(ルーク・マクファーレイン)と出会って恋に落ちるが、2人はゲイカルチャーに対する態度やライフスタイルが違いすぎてなかなかうまくいかない。LGBTQ+歴史博物館のほうも委員会メンバーの意見が対立し、ボビーの人生は私生活も仕事も暗礁に乗り上げてしまう。

 全然お客さんが入らなくて話題になったロマコメだが、内容じたいはかなり面白い…というか、ここ数年で見たロマコメの中ではかなり上位に入るくらいは気が利いている。ボビーは白人のシスジェンダー男性なので性的マイノリティのコミュニティであんまり偉そうにしないように気をつけてはいる…つもりだが性格のせいでけっこう鼻につくようなことも言ってしまうタイプで、頭の回転が速すぎてイヤな感じがすることもある。そんなボビーは全然ゲイカルチャーに触れずに育っていかにもアメリカの主流男性っぽい趣味のアーロンをちょっとバカにしていたのだが、歴史博物館の資金集めを助けてもらったりしながらだんだんアーロンの能力と人格を理解し、成長して自分の気持ちに正直に向き合えるようになっていく。この過程がわりと尖ったユーモアをまじえて描かれており、正攻法のロマンティックな映画である。

 ボビーのお仕事描写もけっこう面白い。歴史博物館で委員会メンバーの意見が全然あわないところの描写は、LGBTQ+コミュニティ特有の問題もある一方、こだわりの強い人が集まっている文化系の施設ではどこでも見られそうな感じもあり、非常に笑えた。アーロンの家族の前で、ついついボビーが仕事柄黙っていられなくなり、セクシュアリティについて早いうちから子どもに教える重要性を演説してしまい、最初は戸惑っていたアーロンの母が最後は理解してくれるというところもホロリとする感じで良かった。