『大いなる自由』と一緒に見るとよいドキュメンタリー~『エルドラド ナチスが憎んだ自由』(配信)

 『エルドラド ナチスが憎んだ自由』を配信で見た。第二次世界大戦前から直後くらいまでのドイツの性的マイノリティの歴史を扱ったドキュメンタリーである。エルドラドというのはベルリンにあった有名なクラブの名前である。

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 エルドラドは性的マイノリティが自分らしく楽しく過ごせるところだったらしいのだが、実際のところ、このドキュメンタリーで扱われている内容はだいぶ暗い話が多い。クラブでは仲間と出会って自由に過ごせるのだが、それでもトランスジェンダーの女性がクラブの外に出ると逮捕されたりしたそうだ。この頃は既に原始的とはいえ性別適合手術が行われるなど、トランスジェンダーのベルリン市民はマグヌス・ヒルシュフェルトなどの医師を通じて医療にアクセスするようになっていたので、そのルートで犯罪者扱いされないような証明書を出してもらう交渉をしていたらしい。また、ナチスが台頭するとどんどん全部悪いほうに運び、さらに男性同性愛者にとっては戦後もあまり状況が好転しなかった…ということで、『大いなる自由』につながる話になっている。

 全体的にゲイ男性やトランスジェンダー女性についてはけっこうたくさんとりあげられていてわかりやすい(たぶん弾圧が激しくてすぐ逮捕されるので記録がたくさん残っているということがある)。とくに弾圧を生きのびてアメリカで恋人と結婚するまで生きのびたヴァルター・アーレンの回想が含まれているところはなかなか勇気の出る構成になっている。一方でトランスジェンダー男性やレズビアンの女性については比較的扱われているところが少ないと思うので(トランスジェンダー男性で証明書をもらった人もいたらしい)、このへんについてもう少し詳しく知りたいと思った。