コンプソンズの芝居にお店が出てくるとロクなことにならない…『ビッグ虚無』(配信)

 コンプソンズの『ビッグ虚無』を配信で見た。

 あいかわらずコンプソンズらしく概要が説明しづらい芝居である。とあるハプニングバーで性交渉している男女が突如SFっぽい音を立てて消えたことをきっかけにいろいろな展開が…という作品なのだが、その後はどんどん虚実の境界が曖昧な展開になり、インターネットミームやらフェミニズムやら宮内庁やらポストトゥルースやらさまざまなものが出てくるシュールなダークコメディ…のようなものになる。場所が「ハプニングバー」なのがたぶんキーでもあり全体を貫くジョークでもあり、ハプニングバーというのは来店した人が性交渉に及ぶということを「ハプニング」という婉曲な言い方で表現しているのだが、この芝居ではハプニングバーにおいて人がいきなり消えたり世界が終わりに近づいたり、とにかくとんでもないハプニングがたくさん起こる。どうもコンプソンズがどこかのお店を舞台に芝居を作るとロクなことにならないみたいで、終盤の展開の雰囲気はラーメン屋が舞台だった以前の『われらの狂気を生き延びる道を教えてください』にちょっと似ていて、かなりダークな感じである。このダークで希望のないとっちらかり方が現在の世相によく似合っていると思う一方、岸田戯曲賞の候補になった『愛について語るときは静かにしてくれ』などに比べると統一感も減っているし、明るさもなくなっているな…と思った。