新刊『学校では教えてくれないシェイクスピア』 をよろしくお願い申し上げます。

ハッピーエンドの『リア王』~『令和X年のリア王』

 吉祥寺シアターで戯曲組×世AMI合同公演、吉村元希台本、金世一演出『令和X年のリア王』を招待で見てきた。

 『リア王』に沿ってはいるのだが、だいぶ現代風に変わっており、コーディリア(中山璃虹)を陥れるためリーガン(手塚紀乃)があらかじめリア王(森島隆博)に対して画策していたり、道化がいなくてケント(戸澤真治)が道化に化けてリア王に仕えようとしたり、だいぶ変更がある。カットも多い。一番大きい変更はネイハム・テイトよろしくハッピーエンドに改作されているところである。

 まあまあ面白いところもあるし、笑いの使い方はいいのだが、けっこうピンとこない…というか、「なんでこここはこうなんだ?」と思うところも多い公演である。まず、エドガーがトムに変装するとなぜか役者が3人になってとっかえひっかえトムを演じるようになるのだが、これは全然効果のほどがよくわからない…というか、むしろ面白くなくなっている気がした。ひとりの人間ががらりと変わる、つまり生きるために本気の劇中劇をやるところがこのエドガーがトムになる展開の面白さだと思うので、複数名でやるのはかえって面白さを削ぐ。さらに「トムになると別の役者がひとりでやる」ならまあわかるのだが、なんで3人でやるのかが不明…というか、むしろ狂気を装うとアイデンティティがバラバラになる、みたいなよろしくない含みが出てしまう気がする。

 また、ハッピーエンドになっているところもけっこうイマイチである。だいぶカットが多いのもあり、そもそもなんでコーディリアとリア王が勝てたのかよくわからない。あと、ネイハム・テイトの改作を既に読んだことがあるからかもしれないが、私は別にハッピーエンドの『リア王』を見たいわけではない…気がする。