グローブ座『お気に召すまま』〜ちょっと人数の少なさに無理があるか…

 グローブ座で『お気に召すまま』を見てきた。エリザベス朝っぽくシンプルでオーソドックスな演出を目指したらしい。

 『ハムレット』同様、たった8人でとっかえひっかえ役者がいろんな役をやるというスタイルなのだが、規模がデカい『ハムレット』よりも『お気に召すまま』のほうが少人数では厳しいのだということを発見して驚いた。まずジェイクイズとフィービ、公爵とオードリーがダブルキャスト(女ジェイクイズと男オードリー!)なのがきついな…最後の場面では四組の新婚カップルが揃わないといけないのにダブルキャストのせいでえらい舞台上の人数が少ないので、祝祭感があまり出ない。『ハムレット』もそうだが、全体的に少人数でとっかえひっかえやる上演をデカい舞台でやるのは私はあまりよくないと思うな…ローズ座みたいな小さい箱ならともかく、なんてったってその名の通りの世界劇場であるグローブには客も一大スペクタクルを期待してやって来ているわけだから、こういうあまりにもシンプルな上演形式が適しているのか正直疑問。

 全体的には笑いも多くて悪くない舞台だったのだが、数カ所演出に疑問が…まず、ロザリンドとシーリアが真っ黒な服で登場してくるのはよくないように思った。森に入ってからの衣装と対照があるから最初黒くしておいているのかと思ったらそうでもなかったし…あと、タッチストンとオードリーがアホな副牧師(っていう訳語でいいんだっけ?)に結婚させてもらおうとする場面は今まで見た『お気に召すまま』の中でも一番ダメだったと思うねぇ…副牧師が目が悪い老人という設定だったのだが、そういう人をからかうような演出ってちょっと私はかなり嫌だったんだけど。あと少し中盤笑いの頻度が減って中だるみしたように思うのだが、これはちょっと途中で雨が降って寒くなり、客も役者も一時的にテンションが下がったせいで演出の責任ではないかもしれない。

 
 ガナー・コースリー(と読むのだと思うがイマイチ自信ない)のオーランドは血気盛んな若者という感じで非常に良かったと思うし(うちの好みな感じだったのでひいき目になってしまったかもしれないが)、あとウィリアム・オックスボロのオリヴァーは良かったな…オリヴァーは最初はこれ以上ないほど嫌な奴なのに急に改心してシーリアとくっついちゃうというわかりにくい役どころなのだが、この演出ではオリヴァーが最初にギャニミードが実は女であることに気付くということになっており、カンが鋭く女心が意外にわかる男だという設定になっていて面白かった。ベス・パークのシーリアは異様に子どもっぽくってちょっとあまり好きになれなかったが、あれは狙ってやっているのだろうな…ジョー・ハーバートのロザリンドも悪くなかったと思うんだけど、去年のRSC公演で主演したケイティ・スティーヴンズのほうが良かったように思う。

 ただ、最後にハーバートがエピローグをちゃんと言ったのはよかった。「もしも私が女なら〜」という女形専用にあて書きされたエピローグなので、女優を使った現代の上演ではカットされることも多いのだが、ハーバートはそういう言いにくい台詞でもちゃんとお客さんが喜ぶように言っていてこれはいいなと思った。