音楽はいいが、それ以外は…『十二夜より十三夜、または勝手にしやがれ』

 あうるすぽっとで『十二夜より十三夜、または勝手にしやがれ』を見た。渋さ知らズの生演奏をバックにしたシェイクスピア十二夜』の翻案で、一つの役を一人の作者が担当し、まとめて上演するという実験的な企画らしい。舞台は沖縄の島に設定されており、『十二夜』以外にクリストファー・マーロウの『フォースタス博士』も取り込まれている。

 …ということなのだが、正直かなり内容はひどかったと思う。とりあえず役者の台詞が一本調子か噛みまくりかどっちかで、噛みまくりな場合はおそらく本人が台詞の意味わからなくなってるだろうというくらいのレベルで激しく噛んでいた。またまた台詞の内容も全然統一感が無い。一つの役を一人の作者が…というのがそもそも間違いなのではないかと思う(以前、二人のアーティストがパートごとに演出した『トロイラスとクレシダ』を見たんだがあれもひどかったしな)。とくにオリヴィア役にあたる織姫の台詞が一人だけ異常にわざとらしく、織姫が「剥き出しの流れ星」というたびにトマトでも投げつけてやろうかというような気分になった(実際には投げつけてないよ)。一方でマルヴォーリオに相当する丸出魂男の台詞は異常な悪ノリで、ふたなりでブラジャーつけた信長の格好をするところとか、ネタにしてもつまんないしテンション高すぎてついてけなかった。

 沖縄設定もあまり機能しているとは思えなかった。着るもののコンセプトとかはてんでばらばらで統一感ないし…最後のパペットが戦うところだけは沖縄設定が生きていて面白いかなと思ったが、『十二夜』には関係なかったし何をしたかったのかはよくわからないな。沖縄を舞台に翻案するっていうのは面白い試みだと思うのに残念だ。

 とはいえ、渋さ知らズの生演奏はやはり良かった。音楽が鳴っている間はどうにか起きて見ていられた。