けっこうなドタバタ劇~松竹ブロードウェイシネマ『プレゼント・ラフター』

 松竹ブロードウェイシネマ『プレゼント・ラフター』を見た。ノエル・カワードの喜劇の再演で、2017年のモリッツ・フォン・スチュエルプナゲル演出、ケヴィン・クライン主演のプロダクションである。

broadwaycinema.jp

 2019年のNTライヴ版を既に見ていたのだが、それに比べると明らかにドタバタ喜劇っぽく、だいぶ違う芝居に見える。NTライヴ版はキャストのジェンダーを変えている他、ひとりひとり人生に問題を抱えている人たちの生き様がつらさもありつつクスクスおかしい…というようなかなりビターな人情喜劇だったのだが、この『プレゼント・ラフター』はとにかく魅力的な主人公のギャリーを中心に変人たちがぐるぐる回っているような感じにまとめられていて、コメディというよりファース(笑劇)っぽく見えるところすらある。とくにNTライヴ版ではダフニやローランドのような若いギャリーのファンたちが、けっこうな変人だがそれなりに何か背景がありそうな人たちとして多少の厚みをもって描かれていたのだが、ブロードウェイ版では完全に笑わせマシンみたいな素っ頓狂な人々になっている。オシャレかつ生活感のあるセットは綺麗だし、ものすごく笑えるし、とても困った人だがそこに哀愁もにじませるクラインの演技は大変良く、基本的には面白いプロダクションなのだが、深みという点ではNTライヴ版には及ばないと思った。アメリカだとこういうテイストのノエル・カワードのほうが好かれるのか…という点でもとても興味深い。

 ただ、前から思っているのだが、松竹ブロードウェイシネマの宣伝は非常によろしくない。何しろツイートがこの調子で、『キンキー・ブーツ』(松竹ブロードウェイシネマの前の作品)は『プレゼント・ラフター』に全く関係ないので意味がよくわからない。いきなりマーベルとかディズニーのハッシュタグがついているのも意味不明で、ハッシュタグスパムにしか見えない(キャストが一部かぶっているからなのだが、そんなもんこのツイートからわかるわけないし、ディズニーやマーベルのハッシュタグで検索してきた人には何が何やらだろう…)。

 ウェブサイトはやっとできたのだが、紹介文は「大衆から大きな注目を浴びていたようだ」「多くの著名人におよぶらしい」「引用された言葉だそうだ」などなどえらく自信がなさそうな伝聞みたいなことがたくさん書いてあるわりにいつどこで上演された公演の記録だとかいうような基本情報がわかりづらく、お粗末である。このあたりは本当にどうにかしてほしい。