妖精おじちゃま万歳~国際ギルバート・アンド・サリヴァン祭『アイオランシ』(配信)

 国際ギルバート・アンド・サリヴァン祭の配信で『アイオランシ』を見た。John Savournin演出のプロダクションで、初めて見る演目である。

 妖精アイオランシ(メリエル・カニンガム)は人間の男と結婚したかどで妖精の国を追われ、夫とは関係を断ってひとりで息子のストレフォン(マシュー・パーマー)を育てていた。25年たって妖精女王(エイミー・J・ペイン)のお許しが出、妖精の国に戻ってくるが、ストレフォンは大法官(マシュー・ケレット)の被後見人であるフィリス(エミリー・ヴァイン)との結婚を後見人に許してもらえず、悩んでいた。フィリスはストレフォンがアイオランシと一緒にいるところを見て二股をかけられたと思い(アイオランシは妖精で年を取らないので母親に見えない)、求婚者であるマウンタララット伯爵(ベン・マカティア)かトローラー伯爵(ハル・カザレット)のどっちかと結婚すると宣言する。ところがこの2人はどっちがフィリスと結婚するか全く決められない。大法官は自分がフィリスと結婚しようとするが、実は大法官はアイオランシの夫でストレフォンの父だった。これが明らかになり、アイオランシは大法官と再び結ばれようとするが、そこに妖精女王がやってきて、妖精と人間の結婚はまかりならぬと言う。ところが妖精たちは全員、貴族院議員とデキてしまっており、この法律はなし崩しで変更され、若い恋人たちは結ばれ、妖精女王も議会の衛兵ウィリス(マシュー・シヴェッター)と結婚する。

 セットや衣装はヴィクトリア朝っぽく、妖精たちはいかにもそれっぽい衣装で星のついた棒を持ち、ダンスもする。あいかわらずギルバート・アンド・サリヴァンらしいとにかくメチャクチャな話で、英国議会が辛辣に諷刺されている。貴族院は何もしないから英国が偉大なのだというような歌があったり、妖精女王がストレフォンに議会でみんなが言うことを聞く魔法の保護を与えたり、機能していない議会を皮肉るところがたくさんある。一方で妖精のお話であるせいかけっこうファンタジーっぽくなごやかなギャグもあり、ストレフォンが腰まで妖精で足だけ人間という半妖精半人だという意味不明な設定は笑える。最後に妖精女王が夫に選んだウィリスを妖精にして羽根が生えてくるところはとてもカワイイ。これからは妖精おじさんの時代だと思った(???)。