シェイクスピア

昔のシェイクスピアってこんなだったのかな…世田谷パブリックシアター『ハムレット』

世田谷パブリックシアターで野村萬斎演出『ハムレット』を見た。 setagaya-pt.jp 野村萬斎が演出・出演、息子の野村裕基がハムレット役ということで、全体的に衣服などもちょっと和風で、狂言っぽかったり、日本の伝統芸能を意識した演出である。舞台には上…

老優をめぐる1.5人芝居~『バリモア』

シアター1010で『バリモア』を見た。ウィリアム・ルースによる戯曲で、丹野郁弓演出、無名塾による公演である。1942年、『リチャード三世』を久しぶりに演じようとする老優ジョン・バリモアと、声だけのアシスタント、フランクのやりとりで展開する芝居で、1…

かなりちゃんとした『オセロー』翻案~『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』(ネタバレあり)

劇団☆新感線『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』を見てきた。青木豪作、いのうえひでのり演出による『オセロー』の翻案である(かなり『仁義なき戦い』の影響も受けている)。2011年に初演された作品の12年ぶりの再演だが、設定はかなり変更されて…

コミカルな演出で前半のダイジェストっぽさをカバー~シアターχ『ペリクリーズ』

中屋敷法仁演出『ペリクリーズ』をシアターχで見てきた。 この芝居は序盤がダイジェストみたいな感じで(このあたりは書いたがシェイクスピアではない可能性もある)、あまり上演しやすい台本ではない。このプロダクションは語り手のガワー(藤田宗久)の狂…

朝日カルチャーのハムレット講義が無事終了しました

朝日カルチャーのオンラインイベント「こんにちは、素敵な王子さま方 『ハムレット』の変遷」が無事終了しました。お越しくださった皆様、どうもありがとうございます。 www.asahiculture.jp 次回の講座は5/13の「『オセロー』は誰を雇ってどう演出すべきな…

ほんの少しだけ『リチャード三世』~『三月大歌舞伎第一部:花の御所始末』(ネタバレあり)

『三月大歌舞伎第一部:花の御所始末』を見てきた。宇野信夫作で1974年に初演された作品で、今回は40年ぶりの再演だそうである。室町時代の歴史に取材しているが、『リチャード三世』がヒントらしい。 足利義満(河原崎権十郎)の次男である義教(松本幸四郎…

黒澤とは別物~KAAT『蜘蛛巣城』(ネタバレあり)

神奈川芸術劇場で『蜘蛛巣城』を見てきた。タイトルどおり、黒澤明の日本版『マクベス』である映画『蜘蛛巣城』に基づく舞台である。赤堀雅秋演出である。 しかしながら、話はかなり黒澤の映画とは違う。モノクロの迫力ある画面に能の要素などを取り入れ、手…

歌は全部要らない~彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』

埼玉会館にて彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』を見てきた。2020年に上演の予定だったが、新型コロナでいったん中止となった作品である。これで彩の国シェイクスピア・シリーズは完結する。『ジョン王』を生の舞台で見るのは初めてである(映像は…

とても楽しいプロダクション~『ファルスタッフ』

新国立劇場で『ファルスタッフ』を見てきた。指揮がコッラード・ロヴァーリス、演演出がジョナサン・ミラーである。 www.youtube.com 白黒の床に近世っぽいセットで、奥行きを強調する美術である。衣装もわりと近世風だ。ただ、かなりきちんと綺麗に作られて…

テキレジがおかしい~PAM『夏の夜の夢』

東京綾瀬・廃工場跡シアターでPAMの『夏の夜の夢』を見てきた。工場を改修した小さいスペースで、2階にバースペースみたいなところがあり、その上に劇場がある。 何もないブラックボックスで小道具も使わず、5人でいろんな役をとっかえひっかえやるプロダクシ…

悪くはないが、要らない設定も~『ロミオ&ジュリエット』

アレクサンドラ・ラター演出『ロミオ&ジュリエット』を見てきた。衣装は今の若者が着るような服で、完全に現代的な演出である。ロミオ(長谷川慎)たちがたむろしているのはプールバーだし、ロミオとジュリエット(北乃きい)が出会うキャピュレット家のパー…

白人至上主義的ヴァイキング像を皮肉ろうとしつつ、誤って受け取られそうな作品~『ノースマン 導かれし復讐者』

ロバート・エガース監督『ノースマン 導かれし復讐者』を見てきた。『ハムレット』のもともとの伝説を映画化した作品である。脚本にはエガースの他、アイスランドの著名な作家であるショーンが参加している。なお、監督はシェイクスピア研究者のウォルター・…

『白水社の本棚』に『ジョン王』のことを書きました

『白水社の本棚』冬号に『ジョン王』のことを書きました。書誌情報は以下の通りです。 北村紗衣「汗牛充棟だより(8)シェイクスピアの不人気作『ジョン王』」『白水社の本棚』2023年冬号、8-9。

プロスペローが追い出された理由~『gaku-GAY-kai 2022「贋作・テンペスト」』

劇団フライングステージの年末恒例シェイクスピア企画『gaku-GAY-kai 2022「贋作・テンペスト」』を見てきた。第一部が『テンペスト』、第二部がドラァグクイーンなどが出演するショーである。 新宿の大公だったプロスペロー(エスムラルダ)は追放されて孤…

早稲田大学演劇博物館「Words, words, words.―松岡和子とシェイクスピア劇翻訳」

早稲田大学演劇博物館で「Words, words, words.―松岡和子とシェイクスピア劇翻訳」展と「村上春樹 映画の旅」展を見てきた。どちらもけっこう良かったのだが、ただシェイクスピア展については、人名のパネルにはフリガナが必要ではと思った。

1人芝居2本立て~『おふえりや遺文/Carmilla』

消えた王国第1回公演『おふえりや遺文/Carmilla』を見てきた。小林秀雄『おふえりや遺文』とシェリダン・レファニュ『カーミラ』を短編の1人芝居(木原春菜出演)で2本立て上演するというものである。どちらも花なのかゴミなのかというような白い紙が散らば…

英詩研究会『Right Margin』に『恋におちたシェイクスピア』論を書きました

英詩研究会10周年記念詩文集『Right Margin』に『恋におちたシェイクスピア』論を書きました。「なぜシェイクスピアもジョージ・ルーカスもエミリ・ディキンスンも恋に落ちねばならないのか?~『恋におちたシェイクスピア』の功罪」という文章で、表題作の…

『ヴェニスの商人』オンライン講義が無事終了しました

朝日カルチャーで実施した「シャイロックはなぜ残酷な要求をするのか 『ヴェニスの商人』再考」オンライン講義が無事終了しました。お越しくださった方々、どうもありがとうございます。 www.asahiculture.jp 次回は2023年3月4日に「こんにちは、素敵な王子…

『マーダーボット・ダイアリー』風シェイクスピア~『夏の夜の夢』

川口のJUKUBOXでカクシンハン企画、木村龍之介演出『夏の夜の夢』を見てきた。前半のトークイベントにゲストとして参加し、後半の上演も見てきた。 oks-jukubox.com 倉庫の建物で上演する短い『夏の夜の夢』で、80分程度にカットしてある。倉庫にポンとソフ…

RSA Virutal 2022での発表が無事終わりました

RSA Virutal 2022での発表'Did Richard II Really Break the Mirror on Stage?'が無事終わりました。参加者は少なかったのですが、全員『リチャード二世』に言及していてトピックの類似性が高く、話しやすいセッションで良かったです。 rsa.confex.com

『マクベス』のバックステージもの~『ショウ・マスト・ゴー・オン』

世田谷パブリックシアターで『ショウ・マスト・ゴー・オン』を見た。三谷幸喜の有名な喜劇で、演出も三谷が担当している。初めて見たのだが、どうも前の上演の時に比べるとわりと変更箇所があるそうだ。 大学教員の栗林淳一(今井朋彦)が書いた『萬マクベス…

投票してももみ消される観客参加型演劇~『リア王~スマホVSリア王~』

シアター風姿花伝で木村龍之介演出『リア王~スマホVSリア王~』を見てきた。タイトルからわかるように、スマートフォンをonにして見る演劇である。LINEのオープンチャットで登場人物の投稿を見たり、投票をしたりすることができる。舞台の中央にモニタが設…

家族ホラーと涙目のハムレット~ブリストルオールドヴィク『ハムレット』(配信)

ブリストルオールドヴィクの配信でジョン・ヘイダー演出『ハムレット』を見た。 www.youtube.com 現代の衣装で、セットも黒っぽい現代風の美術である。後ろにかなり大がかりな回転する機構がある。オーソドックスに黒ずくめのハムレット(ビリー・ハウル)を…

台本がちょっと混乱気味~『歌妖曲~中川大志之丞変化~』

明治座で『歌妖曲~中川大志之丞変化~』を見てきた。倉持裕が作・演出で、『リチャード三世』をベースにして昭和歌謡界を舞台とした翻案である。 www.sanjushi2nd-2022.com 芸能一家である鳴尾家の息子である定(中川大志)は、家族でひとりだけ顔と四肢に…

チェッカーボードの戦争~オレゴン・シェイクスピア・フェスティヴァル『ジョン王』

オレゴン・シェイクスピア・フェスティヴァルの『ジョン王』を配信で見た。ローザ・ジョシ演出のものである。『ジョン王』はあまり上演されないので、めったにない機会である(映像は何種類か見たことがあるのだが、たぶん私も生では見たことがないと思う)。…

ドタバタ喜劇から最後は綺麗にまとめる演出~言葉のアリア『間違いの喜劇』

佐々木雄太郎演出、言葉のアリア『間違いの喜劇』を見てきた。1時間45分くらいのコンパクトな上演である。両脇にドアがあるセットで、このドアの使い方がちょっと特徴的だ。取り違えによってアンティフォラスとドローミオが家から閉め出される場面では舞台を…

アメリカルネサンス学会オンライン大会で『リチャード二世』についての発表をします

アメリカルネサンス学会のヴァーチャル大会(RSA Virtual 2022)にて、"Did Richard II Really Break the Mirror on Stage?"と題して発表をします。アメリカの時間帯なので、12/2の午前00:30からという凄い時間帯になってしまっています。『リチャード二世』…

「2010年以降の日本/日本語のシェイクスピア上演を問う」セミナーが終わりました

シェイクスピア学会の「2010年以降の日本/日本語のシェイクスピア上演を問う」セミナーが無事終了しました。お越しくださった皆様、どうもありがとうございます。どの発表も面白く、質疑応答も盛り上がって、バランスの良いセミナーになったと思います。私…

ジョン・スノウ…じゃなかったハル、あんな何にも知らないね~ナショナル・シアター・ライブ『ヘンリー五世』

ナショナル・シアター・ライブの『ヘンリー五世』を見てきた。マックス・ウェブスター演出、キット・ハリントン主演でドンマーウェアハウスで収録されたものである。 www.youtube.com 非常に現代的な演出で、軍人たちは迷彩の軍服を着ているし、戦争も完全に…

どうしても一箇所、解釈違いがあり…日生劇場『夏の夜の夢』

井上尊晶演出『夏の夜の夢』を日生劇場で見てきた。 全体的に階段が多く、そこを森に見立てている。宮殿の場面は真ん中に台を置いてやっている(このため、宮中の場面はちょっと舞台が狭いような印象も受ける)。衣装はけっこう現代風なところもあるが、一部…