芝居

しっかりした恋愛劇~『エンジェルス・イン・アメリカ:第二部「ペレストロイカ」』

『エンジェルス・イン・アメリカ:第二部「ペレストロイカ」』を新国立劇場で見てきた。第一部に続き、4時間ある。 この芝居を見るのは3回目なのだが、3回目でやっとなんとなく細かいところも見えてきたような気がした。とくにこのプロダクションの第二部は…

けっこう笑うところが多い~『エンジェルス・イン・アメリカ:第一部「ミレニアム迫る」』

トニー・クシュナー(最近は映画界でよくスピルバーグと一緒にお仕事している)の『エンジェルス・イン・アメリカ:第一部「ミレニアム迫る」』を新国立劇場で見てきた。上村聡史演出でフルオーディションキャストによるものである。二部作の前半部分である…

コミカルなオールメール上演~東京芸術劇場『夏の夜の夢』

東京芸術劇場でアーティストジャパンによる『夏の夜の夢』を見てきた。今井豊茂演出によるオールメール上演である。 テープみたいな緑の線がいろいろなところにある森らしいセットで、ちょっと先日見た『オルフェオ』に似ているが、雰囲気はだいぶ鬱蒼とした…

牧歌的な雰囲気がよく出ている上演~ガーシントン・オペラ『オルフェオ』(配信)

ガーシントン・オペラ『オルフェオ』を配信で見た。モンテヴェルディのオペラで、2022年の夏に上演されたものである。指揮はローレンス・カミングズ、演出はジョン・ケアードが担当している。 www.youtube.com ジョン・ケアードらしい演出である。すぐ外が窓…

北アイルランド紛争を扱ったミュージカル~Beyond Belief: The Life and Mission of John Hume (配信)

Beyond Belief: The Life and Mission of John Humeを配信で見た。デリーのプレイハウスによる配信で、グッドフライデー合意25周年記念の演目である。ノーベル平和賞を受賞した北アイルランドの社会民主労働党ジョン・ヒュームと妻パトリシアに関する伝記も…

イギリスで見たバージョンに比べると…『Gypsy』

東京芸術劇場で『Gypsy』を見てきた。言わずと知れたジプシー・ローズ・リーの伝記ものである。ジューリー・スタイン作曲、スティーヴン・ソンドハイム作詞、アーサー・ローレンツ台本によるもので、どうも最近はソンドハイムブームのようだ。 別に悪くはな…

大変苦手なタイプの上演だった~ナショナル・シアター・ライブ『かもめ』

ナショナル・シアター・ライブ『かもめ』を見てきた。ジェイミー・ロイド演出、2022年の上演を撮影したものである。 www.youtube.com コルクの箱みたいなセットに緑っぽい椅子が並んでいるだけで、それ以外のものは一切ない。役者はほぼ全員舞台上におり、椅…

かなり「愛」が中心のプロダクション~『ジェーン・エア』(配信)

『ジェーン・エア』を配信で見た。ブロンテの原作をジョン・ケアードとポール・ゴードンが翻案したものである。2000年初演のものの日本語版である。 セットなどはわりとオーソドックスな歴史物風である。ナショナル・シアターやブラックアイド・シアターでも…

ファンタジーっぽくデフォルメされているが、扱っている話題は深刻~ミュージカル『マチルダ』

シアターオーブでミュージカル『マチルダ』を見てきた。ロアルド・ダールの原作のミュージカル化で、デニス・ケリー脚本、ティム・ミンチン作詞作曲、マシュー・ウォーチャス脚色・演出の作品である。もともとはロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが上演…

全く演出が好みではなかった~ライン・ドイツ・オペラ『マクベス』(配信)

オペラヴィジョンの配信でライン・ドイツ・オペラ『マクベス』を見た。アントニオ・ファリアーニ指揮、ミヒャエル・タルハイマー演出で、2022年9月30日に上演された公演の映像である。 歌は大変迫力があるのだが、とにかく美術が極めて私の苦手なタイプのも…

いいところはあるのだが、いくつか大きな問題が…『歌うシャイロック』

鄭義信が台本・演出をつとめた『歌うシャイロック』を池袋のサンシャイン劇場で見てきた。『ヴェニスの商人』の翻案である。鄭義信はこれまでにもシェイクスピアの翻案として『泣くロミオと怒るジュリエット』や『赤道の下のマクベス』を作っている。既に韓…

昔のシェイクスピアってこんなだったのかな…世田谷パブリックシアター『ハムレット』

世田谷パブリックシアターで野村萬斎演出『ハムレット』を見た。 setagaya-pt.jp 野村萬斎が演出・出演、息子の野村裕基がハムレット役ということで、全体的に衣服などもちょっと和風で、狂言っぽかったり、日本の伝統芸能を意識した演出である。舞台には上…

わりとセクシーな物語バレエ~英国ロイヤル・オペラ・ハウス『赤い薔薇ソースの伝説』(試写)

英国ロイヤル・オペラ・ハウス『赤い薔薇ソースの伝説』を試写で見た。クリストファー・ウィールドン振付、ジョビー・タルボット作曲(台本はこの2名の共作)による新作バレエである。原作はラウラ・エスキヴァルの小説『赤い薔薇ソースの伝説』で、同名の映…

Foil Arms and Hog, "Swines"

セントパトリックスデーの週にウェブ配信された、アイルランドのコメディトリオFoil Arms and Hogの"Swines"を見た。1時間くらいのコメディショーで、通常のスケッチの他、Brexitの歌など音曲漫才っぽいコントも複数含まれている。途中で出演者が笑いすぎて…

老優をめぐる1.5人芝居~『バリモア』

シアター1010で『バリモア』を見た。ウィリアム・ルースによる戯曲で、丹野郁弓演出、無名塾による公演である。1942年、『リチャード三世』を久しぶりに演じようとする老優ジョン・バリモアと、声だけのアシスタント、フランクのやりとりで展開する芝居で、1…

かなりちゃんとした『オセロー』翻案~『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』(ネタバレあり)

劇団☆新感線『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』を見てきた。青木豪作、いのうえひでのり演出による『オセロー』の翻案である(かなり『仁義なき戦い』の影響も受けている)。2011年に初演された作品の12年ぶりの再演だが、設定はかなり変更されて…

東京ノーヴイ『アンティゴネー』(配信)

東京ノーヴイの配信版『アンティゴネー』を見た。だいぶ以前にライヴで見たことがある。こちらは配信用に作られたものである。 大変変わった撮り方で、あんまり演劇らしくはない。モノクロでほとんど顔にクロースアップするだけの撮り方で、役者の動きを全体…

ドラマティックな歴史バレエ~『クレオパトラ in Cinema』

Kバレエカンパニーの舞台を撮って映画館で上演するシリーズの一部である『クレオパトラ in Cinema』を見てきた。2022年10月29日にBunkamuraで上演されたマチネを撮ったものである。演出・振付・台本を熊川哲也が担当したオリジナル作品で、作曲はカール・ニ…

コミカルな演出で前半のダイジェストっぽさをカバー~シアターχ『ペリクリーズ』

中屋敷法仁演出『ペリクリーズ』をシアターχで見てきた。 この芝居は序盤がダイジェストみたいな感じで(このあたりは書いたがシェイクスピアではない可能性もある)、あまり上演しやすい台本ではない。このプロダクションは語り手のガワー(藤田宗久)の狂…

前半は楽しめたが、後半は個人的に趣味でなかった~『三月大歌舞伎第二部:仮名手本忠臣蔵十段目/身替座禅』

『三月大歌舞伎第二部:仮名手本忠臣蔵十段目/身替座禅』を見てきた。 『仮名手本忠臣蔵』を見るのは初めてなのだが、十段目「天川屋義平内の場」はあまり単独で上演されることがない場面だそうだ。商人である天川屋義平(中村芝翫)は赤穂の義士たちを助け…

ほんの少しだけ『リチャード三世』~『三月大歌舞伎第一部:花の御所始末』(ネタバレあり)

『三月大歌舞伎第一部:花の御所始末』を見てきた。宇野信夫作で1974年に初演された作品で、今回は40年ぶりの再演だそうである。室町時代の歴史に取材しているが、『リチャード三世』がヒントらしい。 足利義満(河原崎権十郎)の次男である義教(松本幸四郎…

尺が長すぎでは?~『アンナ・カレーニナ』

Bunkamuraシアターコクーンで『アンナ・カレーニナ』を見てきた。フィリップ・ブリーン台本・演出によるトルストイ作品の舞台化である。 www.youtube.com 序盤はドールハウスのある子ども部屋みたいなところで展開し、場面転換もなく、役者が自分は出ない場…

黒澤とは別物~KAAT『蜘蛛巣城』(ネタバレあり)

神奈川芸術劇場で『蜘蛛巣城』を見てきた。タイトルどおり、黒澤明の日本版『マクベス』である映画『蜘蛛巣城』に基づく舞台である。赤堀雅秋演出である。 しかしながら、話はかなり黒澤の映画とは違う。モノクロの迫力ある画面に能の要素などを取り入れ、手…

歌は全部要らない~彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』

埼玉会館にて彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』を見てきた。2020年に上演の予定だったが、新型コロナでいったん中止となった作品である。これで彩の国シェイクスピア・シリーズは完結する。『ジョン王』を生の舞台で見るのは初めてである(映像は…

とても楽しいプロダクション~『ファルスタッフ』

新国立劇場で『ファルスタッフ』を見てきた。指揮がコッラード・ロヴァーリス、演演出がジョナサン・ミラーである。 www.youtube.com 白黒の床に近世っぽいセットで、奥行きを強調する美術である。衣装もわりと近世風だ。ただ、かなりきちんと綺麗に作られて…

とてもよくできた新作オペラ~『めぐりあう時間たち』

METライブビューイングで『めぐりあう時間たち』を見てきた(リンク先の公式サイトはあらすじがちょっと間違っているような気がするが…)。ケヴィン・プッツ作曲の新作オペラで、マイケル・カニンガムの小説と映画化作品を原作としている。フェリム・マクダ…

テキレジがおかしい~PAM『夏の夜の夢』

東京綾瀬・廃工場跡シアターでPAMの『夏の夜の夢』を見てきた。工場を改修した小さいスペースで、2階にバースペースみたいなところがあり、その上に劇場がある。 何もないブラックボックスで小道具も使わず、5人でいろんな役をとっかえひっかえやるプロダクシ…

プロジェクションの使い方が面白い~『MEAN GIRLS』

東京建物Brillia HALLで『MEAN GIRLS』を見てきた。ロザリンド・ワイズマンの子育て本『女の子って、どうして傷つけあうの?―娘を守るために親ができること』に基づく有名映画『ミーン・ガールズ』のミュージカル化である。ティナ・フェイが映画と同様に脚本…

マシュー・ボーンシネマ『くるみ割り人形』にコメントを提供しました

マシュー・ボーンシネマ『くるみ割り人形』にコメントを提供しました。映画館で上映されます。切ないところもありつつ楽しい作品なので、是非ご覧下さい。 www.culture-ville.jp

悪くはないが、要らない設定も~『ロミオ&ジュリエット』

アレクサンドラ・ラター演出『ロミオ&ジュリエット』を見てきた。衣装は今の若者が着るような服で、完全に現代的な演出である。ロミオ(長谷川慎)たちがたむろしているのはプールバーだし、ロミオとジュリエット(北乃きい)が出会うキャピュレット家のパー…