英文学

女性陣の親密感は良いが…Pカンパニー『お気に召すまま』

西池袋のスタジオPでPカンパニー・P-Quest『お気に召すまま』を見てきた。こじんまりした箱で木下順二訳を使ってやるという試みである。演出じたいは笑いのツボを押さえたもので、そんなに悪くなかった。 全体的に、ロザリンドとシーリアの親密感の表現は大…

演出は良いが、セリフの流れが…チョコレートカンパニー改めディ・ショコラーデ『タイタス・アンドロニカス』

新宿のSpace雑遊で、チョコレートカンパニー改めディ・ショコラーデの『タイタス・アンドロニカス』を見てきた。この作品は切株に人肉食などが満載で、シェイクスピアの作品の中でも最も残虐なもので、一時期は非常に不人気だったのだが、辛辣な政治諷刺や独…

「デジタル・ヒューマニティーズと英文学の未来」研究会

昨日は「デジタル・ヒューマニティーズと英文学の未来」研究会に行ってきた。ツダりまとめはこちら。

ウィキペディアに英文学関係テンプレートを設置

今日は授業準備のついでのジェーン・オースティンとブロンテ姉妹のテンプレートを作った。

ひたすら綺麗な蜷川『マクベス』

Bunkamuraで蜷川幸雄演出の『マクベス』を見てきた。「仏壇マクベス」と呼ばれているものの再演である。 舞台には「仏壇」というか観音開きの扉があり、これを最初にふたりのお婆さんが開けて話が始まる。このお婆さんは上演中、ずっと両脇に座っているので(…

この物語に神の介在は必要か?チュイテル・イジョフォー出演、ナショナル・シアター『万人』(Everyman)

ナショナル・シアターでチュイテル・イジョフォー主演の『万人』(Everyman)を見てきた。中世イングランドの道徳劇の中でも最もよく知られている『万人』(Everyman)を桂冠詩人のキャロル・アン・ダフィが現代風に翻案したものである。 中世の道徳劇というのは…

ベネディクトは良いが、演出の関節が外れている〜ベネディクト・カンバーバッチ主演、バービカンの『ハムレット』(演出ネタバレ注意)

話題沸騰のベネディクト・カンバーバッチ主演『ハムレット』をバービカンで見てきた。演出はリンジー・ターナー。 ↓売り出した瞬間にウェブサイトで買ったチケット。一瞬で売り切れたらしいので幸運であった。 バービカン内に入ると、ツイッターでの観客の感…

ヨークシャ(9)ヨークの薔薇戦争関連展示、フィリッパ・ラングリー講演会

ヨークはヨーク家ゆかりの土地だということで薔薇戦争関係の展示がいろいろ充実している。 ヨーク博物館前の公園。 公園ではフクロウショーも。 中に入ると、中世の吟遊詩人の生演奏が! これはダルシマー。コールリッジの「クブラ・カーン」に出てくるヤツ…

ヨークシャ(4)ルイス・キャロルゆかりのリポン大聖堂をたずねて

ファウンテンズ・アビーはリポンという小さな街の郊外にあるのだが、このリポンには大聖堂がある。 入るとウサギがお出迎え!実はこのリポン大聖堂はルイス・キャロルゆかりで、私がここに来た主目的もそのためである。 キャロルのお父さんがこのリポン大聖…

ヨークシャ(1)蒸気機関車に乗り、ブロンテの世界、ハワースへ

コーンウォールからヨークシャに移動した。ヨークシャではハロゲイトで行われるギルバート・アンド・サリヴァン・フェスティバルを取材するのが主目的なのだが、ハロゲイトは便利なところにあるため、近隣の文学関連史跡をけっこう訪れることができた。 まず…

コーンウォール(6)断崖に建つ海の劇場ミナック・シアターにて『リア王』

さて、ポースカーノに行ったのは今回のコーンウォール行きの最大の目的であるミナック・シアター訪問のためである。 ミナック・シアターはポースカーノの海の岸壁にたっている野外劇場だ。ロウィーナ・ケイドという女性が何人かの地元の関係者の助けを受けな…

佐野隆弥『エリザベス朝史劇と国家表象』(九州大学出版会、2015)

佐野隆弥『エリザベス朝史劇と国家表象』(九州大学出版会、2015)を読んだ。エリザベス朝史劇と国家表象 —演劇はイングランドをどう描いたかposted with amazlet at 15.08.08佐野 隆弥 著 九州大学出版会 売り上げランキング: 1,736,813Amazon.co.jpで詳細を…

子どものためとはいえ、若々しくない〜子どものためのシェイクスピア『ロミオとジュリエット』

あうるすぽっとで、華のん企画の子どものためのシェイクスピア『ロミオとジュリエット』を見てきた。これはかなり好き嫌いのある演出だと思うのだが、私は全く面白くなかった。 まず、ロミオとジュリエットの間にケミストリというか、息の合った情熱的な雰囲…

佐々木蔵之介の身体を争う20もの役柄〜パルコ劇場『マクベス』

パルコ劇場でアンドリュー・ゴールドバーグ演出の『マクベス』を見てきた。佐々木蔵之介がひとりでマクベスの役を全部演じるというもので、スコットランドなどで既に成功した演目を日本に持ってきて日本語で、ということらしい。 舞台は精神病院で、患者が入…

クロースアップの罠〜ナショナル・シアター・ライブ『スカイライト』

ナショナル・シアター・ライブの『スカイライト』を見てきた。これはデイヴィッド・ヘアーの1995年の戯曲の再演で、スティーヴン・ダルドリーが演出をつとめている。初演でも主演をつとめたビル・ナイが再び主役を演じ、相手役はキャリー・マリガン。 キャリ…

「死んでしまいたい」で終わる喜劇〜インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドン『ヴェニスの商人』

明星大学シェイクスピアホールで、毎年恒例インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドンによる『ヴェニスの商人』を見てきた。インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドンはADG EuropeとTNT theatreがツアーするときに使っている名前だそう…

苦悩のヒースクリフ、狂気のキャサリン〜『嵐が丘』

日生劇場でG2演出『嵐が丘』を見てきた。主演はキャサリン役が堀北真希、ヒースクリフ役が山本耕史である。 場面については後ろにスロープがあり、前でアクションが展開されるようなセットのほか、嵐が丘及びスラッシュクロス屋敷の屋内セットが入れ替わる。…

デンマークどうでしょう〜下北沢『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』

下北沢のOff・Offシアターで鵜山仁演出の『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』を見てきた。言わずと知れたトム・ストッパードの『ハムレット』翻案戯曲である。一度ロンドンで見たことがあるので、おおまかな展開(というか、タイトルでネタバレだ…

過去・現在・未来、音楽と笑いはどこにある?銀河劇場『夜想曲集』

銀河劇場で小川絵梨子演出『夜想曲集』を見てきた。原作は言わずと知れたカズオ・イシグロの短編集である。夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)posted with amazlet at 15.05.14カズオ イシグロ 早川書房 売り上げランキング: 17,91…

長渕剛にご用心〜カクシンハン『オセロー』(Black)

木村龍之介演出、カクシンハン『オセロー』のBlack初日を見てきた(出張のためWhiteは見られない予定)。 ハコが池袋のシアターグリーンなので、前にカクシンハンが使っていた新宿Space雑遊とは少し違った感じである。真ん中に折り目がある、黒い移動式のつい…

正義よりも大切な、公正〜新国立劇場『ウィンズロウ・ボーイ』(ネタバレあり)

テレンス・ラティガン作、鈴木裕美演出『ウィンズロウ・ボーイ』を新国立劇場で見てきた。 本作は実際にあった事件をもとにしたものらしい。舞台はエドワーディアン期のロンドン。オズボーン士官学校に通っていたウィンズロウ家の末息子ロニーが盗難の疑いで…

弱い君主とジェンダー/セクシュアリティ問題〜さいたまネクスト・シアター『リチャード二世』

蜷川幸雄演出、さいたまネクスト・シアター『リチャード二世』を見てきた。 演出にはいろいろ面白いところがたくさんある。車いすのご老人たちと若者の対比および調和とか、奥行きや傾斜の使い方とかは見ているだけで興味深い。しかしながら、以前デイヴィッ…

ニューオーリンズ(3)ドロシー・パーカー短編の舞台化『ワルツ』

さて、ホテル劇の次はドロシー・パーカーの短編「ワルツ」を舞台化した作品「ワルツ」(The Waltz)を見た。クローディア・ボームガーテンがパーカーの作品をもとに作った短い一人芝居で、最初に少し伝記的な話(全てパーカーの書いたものに基づいているらしい)…

秘密と影〜日生劇場『十二夜』

日生劇場でジョン・ケアード演出『十二夜』を見てきた。 このプロダクションの特徴はセットが大変凝っていることである。真ん中にはラテン語の銘文が入った日時計がある。その両脇には三重くらいになっている半円形の緑の生け垣があり、生け垣と生け垣の間は…

「Please Release Me, Let Me Go――シラクサのドロミオスについて」

高田康成先生最終講義「Please Release Me, Let Me Go――シラクサのドロミオスについて」をきいてきた。『間違いの喜劇』のシラクサのドローミオの素っ頓狂な台詞を終末的ヴィジョンから読み解くという内容だった。個人的にはドローミオの台詞とキリスト教化…

リチャードを2人が演じる、野心的な翻案〜少年社中『リチャード三世』

あうるすぽっとで少年社中の『リチャード三世』を見てきた。場所や時代は特定されていないが、衣装は和装にいろいろ手をいれたようなもので、ヨークは白、ランカスターは赤というふうに基調色を分けている。セットは舞台手前から奥に歪んだ木の橋みたいな通…

ガワーの語りにのせられて〜本多劇場『ペリクリーズ』

本多劇場で加藤健一事務所『ペリクリーズ』を見た。たぶん『ペリクリーズ』は昔蜷川版を見たので二度目だと思う。『ペリクリーズ』は話がかなりとっちらかっているので大変な戯曲だと思うのだが、おとぎ話的な雰囲気や笑いを強調することで原作の強引な展開…

壁際のハムレット〜新宿梁山泊『ハムレット』

芝居砦・満天星で新宿梁山泊『ハムレット』を見てきた。実は既に今年三本目の『ハムレット』でいい加減デンマーク王室のもめごとにも飽きてきたのだが、エネルギッシュないいハムレットだったと思う。 基本的にはモダナイズのない上演で、衣装もセットもヨー…

野心的だが、話のつながりが悪い〜鮭スペアレ『ロミオとヂュリエット』

横浜の黄金町エリアマネジメントセンターで鮭スペアレ『ロミオとヂュリエット』を見てきた。板張りの屋根裏みたいな部屋に布をつり下げただけのセットで、翻訳は坪内逍遥版を使用、屋根部分に生演奏の楽器を配置し、台詞は歌に近くしつつ、歌い手を踊り手を…

とても野心的、だが…柿喰う客『完熟リチャード三世』

吉祥寺シアターで柿喰う客『完熟リチャード三世』を見てきた。いつもどおりオールフィメールである。 『完熟リチャード三世』はかなり野心的なプロダクションである。オールフィメールなのはいつものことだが、今回はキャストがたった7人と大変規模が小さく…