英文学

またもや夏夢で事故〜スタジオライフ『夏の夜の夢』

中野ウエストエンドでスタジオライフによるオールメール版『夏の夜の夢』を見てきた。スタジオライフの夏夢は修士くらいの時に一度見たことがあるのだが、今回はニューカマーというキャストのに行ってみた。歌が入っているところといい、ヒポリタの扱いと職…

現代日本の家庭劇として『リア王』を翻案する〜『リアの食卓』

新宿のシアターサンモールで嶽本あゆ美作、劇団BDP『リアの食卓』を見てきた。現代日本の家庭を舞台に、『リア王』を翻案したものである。 『リア王』の現代版翻案というとジェーン・スマイリーの『大農場』みたいにかなりの資産がある家を舞台にしたものが…

まっとうなハムレット〜蜷川幸雄演出、藤原竜也主演『ハムレット』

彩の国さいたま芸術劇場で、蜷川幸雄演出、藤原竜也主演の『ハムレット』を見てきた。この二人で既に12年くらい前にハムレットをやっており、それは私も観ている。正直言って前の『ハムレット』のほうが良かったような気がする…たしかに藤原竜也は前より堂々…

修論を書く前に読むべきだった〜Marilyn French, Shakespeare's Division of Experience

恥ずかしながらこの年になってはじめてMarilyn French, Shakespeare's Division of Experience (Jonathan Cape, 1982)を読んだ。Shakespeare's Division of Experienceposted with amazlet at 15.01.24Marilyn French Jonathan Cape Ltd Amazon.co.jpで詳細…

良いところもたくさんあるが、難点も多し〜座・高円寺、タイプス『ハムレット』

座・高円寺でパク・バンイル演出、タイプスの『ハムレット』を見た。 セットは右奥に玉座、左奥にアーチ状の入り口があり、基本的に場面転換はない。衣装はだいたい現代風…だが、完全に現代ものっていうわけではないと思う。 とりあえずいいところはたくさん…

超まじめなモンティ・パイソン本〜R. F. Yeager and Toshiyuki Takamiya , ed., The Medieval Python: The Purposive and Provocative Work of Terry Jones

R. F. Yeager and Toshiyuki Takamiya , ed., The Medieval Python: The Purposive and Provocative Work of Terry Jones ( Palgrave Macmillan、2012)を読んだ。The Medieval Python: The Purposive and Provocative Work of Terry Jones (The New Middle A…

全く私の趣味じゃなかった〜山の手事情社『テンペスト』

山の手事情社の『テンペスト』を池袋の東京芸術劇場で見てきた。まあ意欲的とは言えるのかもしれないが、私は全く面白くなかった… とりあえず私は精神分析のにおいがする上演はたいてい嫌いなのだが、この公演はわりと「プロスペローの狂気と正気」に焦点を…

アンソニー・トロロープ『慈善院長』木下善貞訳(開文社、2010)

ヴィクトリア朝の著名な小説家で、UKではキャノンに組み込まれているが日本では全く人気のないアンソニー・トロロープの『慈善院長』木下善貞訳(開文社、2010)を読んだ。慈善院長posted with amazlet at 15.01.12アンソニー トロロープ 開文社出版 売り上げ…

ディケンズが苦手〜スタジオライフ『大いなる遺産』

新宿のシアターサンモールでスタジオライフの『大いなる遺産』を見てきた。スタジオライフなので、もちろんオールメール(キャストはBowlerhat版)。言わずと知れたディケンズの小説の舞台化である。 …で、思ったのは、とにかく私はディケンズが苦手だというこ…

内部留保出さなきゃオキュパイするぞ!〜『ホビット 決戦のゆくえ』

ピーター・ジャクソン監督、ホビット三部作の最終作『ホビット 決戦のゆくえ』を見てきた。 私はトールキンの原作をちゃんと読んでないのでよくわからないのだが、一言で言うと「内部留保出せ!!」みたいな話だった(この「内部留保」の使い方は経済学的には…

基地の外を嫌うイアーゴーと反乱するエミリア〜ニコラス・ハイトナー演出、NTライヴ『オセロー』

NTライヴの『オセロー』を日本橋のTOHOシネマズで見てきた。これは去年上演されたもので、ニコラス・ハイトナー演出、エイドリアン・レスターがオセロー役でイアーゴー役がローリー・キニアという、これ以上ないような配役の演出である。 美術も演出も、非常…

明星大学創立50周年シェイクスピア生誕450周年記念特別展 「シェイクスピア はじまりは恋の言葉」

改装された明星大学資料図書館で、明星大学創立50周年シェイクスピア生誕450周年記念特別展 「シェイクスピア はじまりは恋の言葉」展を見てきた。ウェブページが大変わかりにくいので、初めて明星大学に来る人には展示場所が日野なのか青梅なのかもよくわか…

良くも悪くも、政治の季節〜『ヴェローナの二紳士』

日生劇場で宮本亜門演出のミュージカル版『ヴェローナの二紳士』を見てきた。これ、原作はかなり台本に問題があってひどい話なので、「楽しくて最高にハッピー」というキャッチコピーを見て非常に不安になっていたのだが、ちょっと不安どころじゃなかった。…

カクシンハン『ハムレット』

カクシンハンの『ハムレット』を見てきた…のだが、これはちょっと依頼劇評を書く可能性がある作品なので(まだ決まってないのだが)、一応覚え書きとしてメモを書くだけにしておこうと思う。・舞台は前回の『仁義なきタイタス・アンドロニカス』に似ており、斜…

音楽はいいが、それ以外は…『十二夜より十三夜、または勝手にしやがれ』

あうるすぽっとで『十二夜より十三夜、または勝手にしやがれ』を見た。渋さ知らズの生演奏をバックにしたシェイクスピア『十二夜』の翻案で、一つの役を一人の作者が担当し、まとめて上演するという実験的な企画らしい。舞台は沖縄の島に設定されており、『…

後半、突如ワークショップに〜『三人でシェイクスピア』

池袋シアターグリーンで、劇団鳥獣戯画の『三人でシェイクスピア』を見てきた。12年で199回もやっているロングランだそうだ。 タイトルどおり、シェイクスピアの全作品(ここでは37作品)をたった3人、90分強でダイジェストでやるというものである。原作はアメ…

公開文化講座 「明治大学シェイクスピア生誕450年記念祭 第2回」

明治大学であった公開文化講座「明治大学シェイクスピア生誕450年記念祭 第2回」に行ってきた。いろいろ人とあう約束とかあって全部出られたわけではないのだが、いちおうきいたところだけはとぅぎゃった。公開文化講座 「明治大学シェイクスピア生誕450…

オールフィメールで「女の芝居」をやる陥穽〜女体シェイクスピア『迷走クレオパトラ』

柿喰う客の女体シェイクスピア006『迷走クレオパトラ』を見た。 セットは同時上演の『暴走ジュリエット』とほぼ同じで、背景が上下逆になっているだけ。台本も、普通にやると相当長い『アントニーとクレオパトラ』を一時間半に満たないくらいまでカットして…

荒ぶる乙女〜女体シェイクスピア『暴走ジュリエット』

柿喰う客の女体シェイクスピア005『暴走ジュリエット』を見てきた。女体シェイクスピアシリーズなのでオールフィメールのキャスティングである。 ステージは後ろにアーチ状の背景(同時上演の『迷走クレオパトラ』ではアーチが上下逆向きに設置されていた)が…

肉感的キャシアスと高潔なブルータス〜彩の国『ジュリアス・シーザー』

彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジュリアス・シーザー』を見てきた。蜷川幸雄演出で、ブルータス役は阿部寛、アントニー役が藤原竜也、キャシアス役が吉田鋼太郎ということで大変な豪華キャストである。 セットは舞台の手前から奥側までかなり大きな階段を…

第53回シェイクスピア学会

昨日今日と第53回シェイクスピア学会に参加してきました。wi-fi環境がなかったのでツダってはいないのですが、一応様子をとぅぎゃっています。2014年シェイクスピア学会 あと、あまり関係ないのですが関連して作った舞台関連のまとめ。 「ミュージカルについ…

ライヴと映像の比較〜ナショナル・シアター・ライヴ『ハムレット』

ナショナル・シアター・ライヴの『ハムレット』を見てきた。 私、ぼんやりしてて「チャールズ・スペンサーがボロクソにけなしてたほうの、私がチケットとれなかったハムレット」だと思って見に行ったんだが、行ってみてから既に生で見たやつだと気付いた。生…

「見つめて、シェイクスピア!展 美しき装丁本と絵で見る愛の世界」

ゼミで学生を連れて、練馬区立美術館「見つめて、シェイクスピア!展 美しき装丁本と絵で見る愛の世界」を見てきた。 新しい美装丁本と、既に骨董扱いされているような挿絵本の両方を展示することで、本のモノとしての側面や、戯曲の視覚的・演劇的側面を見…

ポモセクシュアリティと歴史〜『ヒストリー・ボーイズ』

けっこう前になるのだが、世田谷パブリックシアターでアラン・ベネット作、小川絵梨子演出『ヒストリー・ボーイズ』を見た。なんか私、この芝居を本で読んだ気がしていたのだが、見てみたら覚えがなかったので勘違いだったみたい… 舞台は80年代シェフィール…

個人的な好みで話が苦手〜ハロルド・ピンター『背信』

東京芸術劇場で葛河思潮社第四回公演『背信』を見てきた。ハロルド・ピンターの芝居を生で見るのは初めて。 登場人物は四人だけ(うち一人は一場面しか出てこない)。エマ(松雪泰子)はロバート(田中哲司)と結婚しているが、ロバートの親友ジェリー(長塚圭史)と…

おっさんもおばさんも恋したい!〜オスカー・ワイルド『真面目が肝心』

ハロルド・ピンター座でオスカー・ワイルドの『真面目が肝心』(The Importance of Being Earnest)を見てきた。言わずと知れたワイルドの大人気戯曲なのだが、意外なことに舞台では初めて見た。 全く批評を読まずに行ったので、セッティングを見て「あれ、こ…

完全なるドタバタ〜グローブ座『間違いの喜劇』

グローブ座で『間違いの喜劇』を見てきた。いつものグローブらしく、ルネサンス風の舞台と衣装を使った上演だが、とにかくドタバタ喜劇としての側面に焦点をあてている。 もともとこのお芝居はシェイクスピアの他の作品に比べて詩情溢れる台詞があるわけでは…

レザボア・クラウンズ、あるいはパルプ・ヒストリー〜マーティン・フリーマン主演『リチャード三世』

トラファルガー・スタジオでマーティン・フリーマン主演の『リチャード三世』を見てきた。演出はジェイミー・ロイド。 時代は台詞にもある(というか、この芝居の台詞が元になってそう呼ばれている)「不満の冬」こと1970年代末くらいに設定されており、現実に…

フェミニズムと英文学〜村岡恵理『アンのゆりかご−村岡花子の生涯』

村岡恵理『アンのゆりかご−村岡花子の生涯』(新潮社、2008)を読んだ。朝ドラの原案ということで文庫本が今すごく売れているらしい。アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)posted with amazlet at 14.08.20村岡 恵理 新潮社 (2011-08-28)売り上げランキン…

溢れるエネルギーと異性配役〜『仁義なきタイタス・アンドロニカス』(ネタバレあり)

カクシンハン『仁義なきタイタス・アンドロニカス』を見てきた。女役の男優の乳首がやたらに見えたり、銃撃虐殺エンドだったりするあたりが昨日見た『ロミオとジュリエット』とそっくりだったのだが、段違いに面白い。小さい小屋を所狭しと動き回る役者たち…