ジェンダー

ドウォーキン『インターコース』

なんとこの年になって初めてアンドレア・ドウォーキンの『インターコース』をちゃんと最初から最後まで読んだ。 とりあえず、もっと早く読んでおけばよかったと思った。前半の大部分は小説や戯曲などを対象とした女性と性の表象史分析で、ひとつひとつの文学…

19世紀〜20世紀初頭の英国、女性柔術家が参政権のために立ち上がった!エメリン・ゴドフリィ『ヴィクトリア朝文学と社会における女性性、犯罪と自衛:刀扇子から女性参政権運動家まで』

19世紀〜20世紀はじめの英国の女性の自衛に関する研究書、Emelyne Godfrey, Femininity, Crime and Self-Defence in Victorian Literature and Society: From Dagger-Fans to Suffragettes, Palgrave Macmillan, 2012(エメリン・ゴドフリィ『ヴィクトリア朝…

もうフェミニストじゃないなんて言わせない!キャトリン・モラン、How to be a Woman(女になる方法)

キャトリン・モラン(Caitlin Moran)の自伝的エッセイ、How to Be a Woman「女になる方法」(Ebury Press、2011)を読んだ。とにかくユーモアがあって笑えるので本当にオススメ。 キャトリン・モランはウォルヴァーハンプトンのカウンシルハウスで育ったアイリ…

『アメリカン・イディオット』〜60年代ガールポップの後継者としてのグリーンデイ

ハマースミスアポロでグリーンデイのアルバムに基づいたロックオペラ『アメリカン・イディオット』を見てきた。曲は二枚のコンセプトアルバム『アメリカン・イディオット』及び『21世紀のブレイクダウン』からとってきている。主筋は『アメリカン・イディオ…

コックピット座、サイエンスバーレスク〜野心的だが失敗気味の科学コミュニケーションショー

コックピット座でサイエンスバーレスクというショーを見てきた。バーレスクと言っているがストリップティーズショーはなく、もうちょっとオーソドックスなタイプのバーレスクで、パロディやきわどいスタンダップコメディ、セクシーな歌なんかを使って科学の…

Tiffany Potter, ed. Women, Popular Culture, and the Eighteenth Century(『18世紀のポピュラーカルチャーと女性』)〜大衆文化史に興味ある人は必読!

Tiffany Potter, ed. Women, Popular Culture, and the Eighteenth Century (University of Toronto Press, 2012)を読んだ。18世紀イングランドの大衆文化と女性の関わりをかなりまんべんなく扱った論文集で、ポピュラーカルチャーの歴史に興味ある人は必読…

レオス・カラックス新作『ホーリー・モーターズ』〜古典的な世界劇場であり、インターネットの時代のSF寓話であり、男を演じることについての話でもある(ネタバレあり)

レオス・カラックスの新作『ホーリー・モーターズ』を見てきた。私の座右の銘のひとつに「ラース・フォン・トリアーに投資して映画ができるくらいならレオス・カラックスに投資して一本も映画ができないほうがマシ」というものがあるのだが(いや、この座右の…

ドリー祭りだ!!ニュー・ウィンブルドン座、ミュージカル版『9時から5時まで』

ニュー・ウィンブルドン座でミュージカル版『9時から5時まで』を見てきた。1980年の古典的コメディ映画の翻案で、音楽はもちろんもとの映画のヒロインの一人だったドリー・パートンが担当。劇場はここ↓ 話はもちろん原作同様セクハラ上司を三人の女性会社員…

イズリントン散策〜婦人参政権のため戦った武道家をしのぶ

イズリントンをちょっと散策したのでその写真。 なんの変哲もない広場。 ここにはとある著名人が住んでいた。婦人参政権運動の闘士で、英国初の女性柔術教師としてサフラジェットたちに護身術を教えた武道家イーディス・ガラッドの家のあとにあるブルー・プ…

『人文情報学月報』に学会報告を書きました

今月の『人文情報学月報』メールマガジンにGirls and Digital Culture: Transnational Reflections on Girlhood 2012の学会報告を書きました。こちらで無料公開されています。

ニュー・ウィンブルドン座『キューティ・ブロンド:ミュージカル』(Legally Blonde: The Musical)〜コロスを導入するなど舞台的な工夫多数、とても楽しかった

ニュー・ウィンブルドン座で『キューティ・ブロンド:ミュージカル』(Legally Blonde: The Musical)を見てきた。ぼやっとしてるうちにサヴォイ座でやってたウェストエンド公演を見逃してしまったのでツアーで鑑賞…なのだが、ニュー・ウィンブルドン座って一…

Herbert Sennett, Nicholas Rowe and the Beginnings of Feminism on the London Stage

Herbert Sennett, Nicholas Rowe and the Beginnings of Feminism on the London Stage (Academica Press, 2005)をやっと読んだ。 シェイクスピアの編者で王政復古演劇末期の劇作家であるニコラス・ロウに関する基本的な研究書で、いわゆるロウのShe-tragedy…

ジュリエット・ビノシュ主演、バービカン『令嬢ジュリー』〜やっぱこれ戯曲がダメなんじゃない?

バービカンでストリンドベリの『令嬢ジュリー』を見てきた。これ、静岡芸術劇場で2010年にやったフレデリック・フィスバックのバージョンを同じスタッフでキャストをフランス版にしたもので、主演はなんとジュリエット・ビノシュ。フランス語に英語字幕がつ…

Girls and Digital Culture(「女子とデジタル文化」)学会二日目まとめ

昨日に引き続き、Girls and Digital Culture(「女子とデジタル文化」)学会ツダりのまとめ。ただし全部のセッションには出られなかった。Girls and Digital Culture (「女子とデジタル文化」)学会二日目まとめ

Girls and Digital Culture(「女子とデジタル文化」)学会一日目まとめ

本日はこちらに参加してきた。 Girls and Digital Culture: Transnational Reflections on Girlhood 2012(「女子とデジタル文化」)学会 とりあえずツダったのでまとめた。 Girls and Digital Culture (「女子とデジタル文化」)学会一日目まとめ リサ・ナカム…

トニ・モリスンが脚本を書いた『オセロー』の翻案音楽劇『デズデモーナ』(バービカン)〜とても力のある作品だが、死後の世界とかいらない

バービカンでトニ・モリスンが脚本を書き、ロキア・トラオレが音楽を作った『オセロー』の翻案音楽劇『デズデモーナ』を見てきた。 ほとんど一人芝居に近いもので、役がふられているのはデズデモーナ役(たまにオセローやエミリアも自分でやったりする)の白人…

ロンドンコロシアム座、ケープタウンオペラによるソウェト版『ポーギーとベス』〜男性性と身体障害

ロンドンコロシアム座でケープタウンオペラによる『ポーギーとベス』を見てきた。言わずとしれたガーシュウィンの有名作で舞台はアメリカ南部なのだが、ケープタウンオペラによる上演ということで舞台はアパルトヘイト時代のソウェトに移され、セットも南ア…

精神医学vsセクシャルマイノリティの抵抗〜ジョー・オートン『執事が見たこと』(What the Butler Saw)

ヴォードヴィル座でジョー・オートンのファース(笑劇)『執事が見たこと』(What the Butler Saw)を見てきた。主演はブラックアダーのティム・マキナリー。 ジョー・オートンは60年代にすごく人気のあった劇作家でイギリスではわりと有名だと思うのだが、1967…

アーコラ座(テント)、ペニー・アーケイド"Bitch! Dyke! Faghag! Whore!"(クソアマ!レズ!おこげ!売女!)〜バーレスクとスタンダップコメディ、ドキュメンタリー演劇を組み合わせた超クィアなショー

アーコラ座のテントでペニー・アーケイドのショー、"Bitch! Dyke! Faghag! Whore!"(クソアマ!レズ!おこげ!売女!というような本人以外は使っちゃいけない言葉を並べたすごいタイトル)を見てきた。全然何の予備知識もなく言ったのだが、ウィキペディアに項…

舞台、観客、その間にある権力〜バナナ学園問題から考えたこと

えーっと、一昨日くらいから演劇クラスタを騒がせているバナナ学園問題というのがある。これはバナナ学園純情乙女組というカンパニーが王子小劇場で行った「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」という公演において、男性パフォーマーが…

ジョージ・ムア原作、グレン・クローズ主演『アルバート・ノッブズ』〜19世紀ダブリンで生きるために男装した女性の数奇な運命

19世紀末〜20世紀初頭に活躍したアイルランドの小説家で自然主義英文学の代表的な書き手であるジョージ・ムア原作の映画『アルバート・ノッブズ』を見てきた。これは1910年代に出版された短編の映画化で、グレン・クローズが生きるために男装してそのまま男…

主役をサッチャー政権下のゲイにした翻案版『ドン・ジョバンニ』〜ロンドンで一番ホットなゲイクラブ、Heavenにて上演!

ロンドンで一番ホットなゲイクラブのひとつらしいチャリングクロスのHeavenでモーツァルトの『ドン・ジョバンニ』ゲイ版翻案を見てきた。脇役の歌の技術とか音響には若干文句があるが、基本的には大満足。 なんか昨日まで場所は金曜日に行ったチャリングクロ…

ロンドン女性図書館予算削減か、抗議署名を受付中

以前紹介したロンドン女性図書館の予算が大幅にカットされ、最悪の場合閉鎖もありうるという噂が流れているため、予算削減に抗議する署名を集めているそうです。Save the Women's Library at London Metropolitan University まだ噂の段階ですが、ここは女性…

東大の授業料免除申請書類に今年から性別記載欄ができたそうです

まずはid:ari1980さんのこちらのエントリをどうぞ。 「東京大学における書類の性別記載に反対します」 東京大学の授業料免除申請の書類に、今年度から性別記載欄が追加されました。窓口に項目削除要請を出しましたが、一人でできることには限りがあります。…

女性美術館

11日はこの他に国立女性美術館、国立公文書館、ナショナルギャラリーに行った。まずは国立女性美術館から。 ここは女性芸術家の作品のみを選りすぐって展示している。 こんな建物。 展示は服飾から彫刻、絵画までいろいろ。 ジョージア・オキーフとフリーダ…

初めて歴史の学会で発表します

3/1-2にニューヨーク郊外にあるサラ・ローレンス大学であるThe 14th Annual Women's History Conference: Women, The Arts and Activism(第十四回女性史研究集会:女性、芸術、アクティヴィズム)にて‘Feminism and the Canonisation of Drama in Seventeenth…

ナショナルポートレイトギャラリー「最初の女優たち」展〜小規模だが充実、カタログはとにかく買い!

ナショナルポートレイトギャラリー「最初の女優たち」(The First Actresses)展に行ってきた。王政復古で初めて17世紀半ばに公然と女優がロンドンの舞台に立てるようになってから18世紀まで、スター女優の肖像画や舞台を描いた絵画を展示しつつ舞台芸術の歴史…

ボストンポップカルチャー学会アブスト締め切り延長のお知らせ

ボストンで行われるPCA/ACAポップカルチャー学会のアブスト締め切りが12/22まで延長されたそうです。ふるってご応募を。Boston 2012 April 11 - 14, 2012 なお、この学会では『スター・トレック』のスターで、たぶん日系アメリカ人としては最初のアメリカテ…

ナターシャ・ウォルター、Living Dolls: The Return of Sexism(『生き人形――性差別の帰還』)

ナターシャ・ウォルター(Natasha Walter)のLiving Dolls: The Return of Sexism(『生き人形――性差別の帰還』), Virago, 2010を読んだ。 著者のナターシャ・ウォルターは筋金入りのフェミニストで、The New Feminismの著者であり、Women for Refugee Womenの…

ロンドン女性図書館「お仕事いっぱい安賃金〜女性と仕事の物語」展

夕方から図書館史の全学セミナーがあり、本日の会場である東ロンドンの女性図書館に行ってきた(南ロンドンのフェミニスト図書館とは別物)。 ロンドンメトリポリタン大の施設のひとつなのだが、建物は独立してる。 中はこんな感じ。 "All Work and Low Pay: T…